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世界の民話・昔話1

ドイツ

◆主なドイツの民話集
『グリム童話集』
(KINDER-UND HAUSMAERCHEN, GESAMMELT DURCH DIE BRUEDER GRIMM/グリム兄弟によって集められた、子供と家庭のための童話集)
◇編集者:グリム兄弟
    Jacob Grimm(ヤーコブ・グリム)1785-1863
    Wilhelm Grimm(ヴィルヘルム・グリム)1786-1859
◇発表時期:初版 1812年/最終版(第7版)1857年


グリム兄弟について

《文庫で読むグリム童話》
『完訳 グリム童話集』全5冊/金田鬼一:訳 【岩波文庫】
※グリム童話第7版(最終版)の民話201話、最終版からはずされた話や類話21話、児童の読む聖者物語10話、断篇7話、グリム兄弟の遺稿中の童話9話。合計248話収録。

『グリム童話集』(上・下)池内紀:訳/安野光雅:装画・挿画 【ちくま文庫】
※グリム童話第7版(最終版)からの66編に、最終版からはずされた「青ひげ」を加えた合計67編。

『完訳 グリム童話集』全7冊/野村ひろし:訳 【ちくま文庫】
※グリム童話第7版(最終版)採録の民話201話と、子どものための聖者伝10話の全訳。
筑摩書房『完訳 グリム童話集』(1999年〜2000年初版)の文庫化。

『1812初版グリム童話』上下2冊/乾侑美子:訳 【小学館文庫】
※グリム童話初版(第1巻1812年・第2巻1815年)採録の156話から、後の版で削除された作品や改稿された作品を中心に98話を訳出。

『完訳 グリム童話集』全3冊/池田香代子:訳 【講談社文芸文庫】 (NEW 2009/01/30)
※グリム童話第7版(最終版)採録の民話201話と、子どものための聖者伝10話の全訳。
講談社『完訳クラシック グリム童話』(2000年初版)の文庫化。


《グリム童話関連文献》
『少年の魔法のつのぶえ』
ブレンターノ/アルニム:編(矢川澄子/池田香代子:訳)【岩波少年文庫】
ドイツの民謡・わらべうた集。グリム兄弟の民話収集に影響を与える。

グリム兄弟について

グリム兄弟
兄:ヤーコプ Jacob Ludwig Carl Grimm(1785〜1863)
弟:ウィルヘルム Wilhelm Carl Grimm(1786〜1859)
ドイツの文献学者、言語学者。
ヘッセン侯国のハーナウの生まれ。彼らの下に弟3人と妹1人が生まれました。シュタイナウに引っ越したのち、裁判官だった父が1796年に病死し一家は困窮します。宮廷女官長だった伯母の援助で、上の二人はヘッセンの首都カッセルで教育を受けました。二人ともマールブルク大学法学部に学び、図書館司書、ゲッティンゲン大学教授、ベルリン大学教授などを歴任しました。共著として1854年に第1巻を出版し1世紀後の1960年に完成した大事業『ドイツ語辞典』、兄の著書に『ドイツ文法』、弟の著書に『ドイツ英雄伝説』などがあります。
兄は小柄で痩せた剛毅な性格の学者肌、弟は大柄でふくよかで優しい性格の詩人肌と正反対な兄弟でしたが、非常に仲良しでした。兄は一生独身でしたが、弟一家とずっと一緒に暮らしました。

兄弟が図書館司書や国の書記官として働き始めた頃、ナポレオン1世が指揮するフランス軍がヨーロッパ各国に進軍してきました。1806年の神聖ローマ帝国解体から1813年のドイツ解放戦争までフランス軍に占領され、自信喪失したゲルマン民族の間に、文化的誇りをを持とうという気運が高まりました。まだドイツという統一された国がない中でドイツ語圏、ゲルマン民族の文化遺産としての口承文学に学術的興味を持つ知識人が出てきました。
兄弟は、大学の恩師の紹介でロマン派の詩人クレメンス・ブレンターノとアヒム・フォン・アルニムと出会います。ブレンターノとアルニムはドイツの民謡を集めて1806年から1808年にかけて『少年の魔法のつのぶえ』(Des Knaben Wunderhorn/邦訳は岩波少年文庫から出ています)を出版しました。彼らの依頼でグリム兄弟もドイツの古い文献から民謡を集めて送ります。この頃から兄弟はメルヒェンの聞き書きを始めました。メルヒェンを語ってくれた人の中には、のちにウィルヘルムの妻となる薬局の娘ドロテーア・ヴィルト(愛称ドルトヒェン)もいました。
ブレンターノはメルヒェン集の出版を計画し、グリム兄弟に収集したメルヒェンを送ってほしいと頼みました。しかしブレンターノに送った原稿は出版されず、19世紀末になってフランスのアルザス地方の修道院でグリム兄弟の原稿が発見されました。修道院のあった土地にちなみエーレンベルク稿と呼ばれ、グリム童話の研究において重要な存在になっています。

ブレンターノに送った原稿の写しをもとに、兄弟は自分たちで学術的注釈をつけたメルヒェン集をまとめました。『子どもと家庭のためのメルヒェン集』(Kinder-und Hausmarchen)は1812年に第1巻(86編)、1815年に第2巻(70編)が出版されました。その後、収録する話の増減、内容の手直しを重ね、1857年の第7版(メルヒェン201話、聖者伝説10話)を決定稿としました。グリム童話の各話のタイトルに併記されるKHM番号(Kinder - und Housmarchen の略)は第7版に基づきます。
当初『グリム童話集』の売れ行きははかばかしくありませんでした。ところがイギリスでエドガー・テイラーが55話を英訳し、人気銅版画家クルックシャンクによる挿絵をつけた『ドイツ民話集』(German Popular Stories)が1823年と1826年に全2巻で出版され、人気を集めました。英訳本の大成功に刺激を受けて、グリム兄弟自身が50話を選んで画家の末弟ルートヴィヒ・エーミールが挿絵を付けた〈普及版〉を1825年に出版しました。小さい版とも呼ばれる〈普及版〉により子どもたちの支持を得て、グリムのメルヒェンを有名にすることになりました。
グリムの集めたメルヒェンの語り手にはフランス系移民の子孫も多く、厳密にドイツの民話とは言えません。それでもドイツに限らず世界中で親しまれる昔話集を送り出し、多くの子どもと学者に影響を与えました。

『子どもと家庭のためのメルヒェン』(グリム童話集)の改訂履歴
発行年メルヒェン〈霊験譚〉
手稿「エーレンベルク稿」1810年44話
第1版(初版)1812年(第二巻1815年)156話
第2版1819年161話〈付・聖者伝9話〉
普及版(小さい版)1825年50話
第3版1837年168話〈付・聖者伝9話〉
第4版1840年178話〈付・聖者伝9話〉
第5版1843年194話〈付・聖者伝9話〉
第6版1850年200話〈付・聖者伝10話〉
第7版(決定版)1857年201話〈付・聖者伝10話〉


《グリム童話選集》普及版…初版1825年
01KHM001蛙の王様、または鉄のハインリヒ
02KHM003マリアの子
03KHM004こわさを習いにでかけた若者の話
04KHM005狼と七匹の子やぎ
05KHM006忠実なヨハネス
06KHM007うまい商い
07KHM009十二人の兄弟
08KHM010ならず者
09KHM011兄と妹
10KHM013森の三人のこびと
11KHM014三人の糸つむぎ女
12KHM015ヘンゼルとグレーテル
13KHM019漁師とその妻
14KHM021灰かぶり
15KHM024ホレ婆さん
16KHM025七羽のからす
17KHM026赤ずきん
18KHM027ブレーメンの音楽隊
19KHM034かしこいエルゼ
20KHM037親指小僧
21KHM045親指小僧の旅修業
22KHM046フィッチャーの鳥
23KHM047ねずの木の話
24KHM050いばら姫
25KHM051めっけ鳥
26KHM052つぐみひげの王様
27KHM053白雪姫
28KHM055ルンペンシュティルツヒェン
29KHM058犬と雀
30KHM059フリーダーとカーターリースヒェン
31KHM065千枚皮
32KHM069ヨリンデとヨリンゲル
33KHM083しあわせハンス
34KHM087貧乏人と金持ち
35KHM089がちょう番の娘
36KHM094かしこい百姓娘
37KHM098もの知り博士
38KHM102みそさざいと熊
39 忠実な動物たち
(1853年第9版でKHM104「かしこい人びと」に差し替え)
40KHM105ひきがえるの話
41KHM106かわいそうな粉屋の小僧と猫
42KHM110いばらにとびこんだユダヤ人
43KHM020かしこいちびの仕立屋
44KHM124三人兄弟
(1833年第2版でKHM161「雪白とばら紅」に差し替え)
45KHM129腕利き四人兄弟
46KHM130一つ目、二つ目、三つ目
47KHM135白い花嫁と黒い花嫁
48KHM151ものぐさ三人息子
49KHM080めんどりの死
50KHM153星の銀貨

「忠実な動物たち」は決定版では削除

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[2006/10/08]
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