メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈059〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第59号 2004/12/09発行   ●
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【布(5) 木綿 [1]】(もめん)
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■目次
《木綿》綿糸・綿織物
《日本の木綿の歴史》
《綿布の種類》
 織り方による分類/色・染め方による分類/
 用途による分類/産地による分類

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◆木綿(もめん)
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綿花(ワタの種にくっついている白色の繊維)から製したセルロース繊維。
またこの繊維を紡績・紡織した綿糸(めんし)、綿織物のこと。

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◇綿・棉・草綿(わた)
アオイ科の一年草または木本。数種の栽培種と多数の品種があり、
古来最も広く栽培される重要な繊維作物。

ワタの種子を包む白色または淡黒褐色の柔らかな繊維を「綿花(めんか)」
と呼ぶ。
綿花は、綿糸・人造絹糸・火薬・セルロイドなどの原料となり、
また「もめんわた」として衣服・寝具に入れて保温材とする。

ワタの実を綿繰車(わたくりぐるま)にかけ、核(種子)をとったままで
精製していない綿花を「繰綿(くりわた)」と呼ぶ。

繰綿を糸縒車(いとよりぐるま)にかけ、その繊維を引き出し、
撚(よ)りをかけて糸にすることを「紡ぐ(つむぐ)」「紡績」という。

現在世界で栽培の大部分を占める「陸地綿」は中米原産、
長繊維の「ペルー綿」「エジプト綿」「海島綿」は南米原産、
短繊維の「アジア綿」はアジア原産である。

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◆綿糸(めんし)
「木綿糸(もめんいと)」「カタン糸」とも言う。
綿花を主原料とする紡績糸。

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◆綿織物(めんおりもの)
綿糸を用いた織物。

綿織物は一般に堅牢(けんろう)で耐久力があり、吸水性に富み熱にも強い。
欠点としては、縮みやすく皺(しわ)になりやすい。

安価で丈夫なので実用的な衣料や室内装飾品、機械や器具の部品布などとして
用途が広い。

和服・着物としては日常着に用いられる。
また肌着・寝間着・足袋の素材としても用いられる。

江戸時代は単(ひとえ)・袷(あわせ)のほか、袷にわたを入れた
「布子(ぬのこ)」があった。

「浴衣(ゆかた)」は夏季に着る木綿の単(ひとえ)の一種。

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《日本の木綿の歴史》
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木綿はエジプト・インド・南米が原産地で、紀元前から栽培されていた。
西洋では長く毛と麻が織物の主流であり、18世紀の産業革命以後、綿織物が
普及する。

日本では古く「木綿(ゆう)」があったが、これは絹に対して麻やコウゾ、
フジなどの植物繊維でつくる布のことであった。

延暦18年(799年)に、三河地方の幡豆郡天竺村(今の愛知県西尾市)に
漂着した崑崙人によって綿の種がもたらされた記録があるが、
これは根付かなかったらしい。

※崑崙(こんろん)
……唐・宋の時代の頃、マレー半島・インドシナ半島方面の総称

鎌倉から室町時代に中国や朝鮮半島から輸入され、上流階級の人々が用いた。
戦国時代(室町末期)には三河・伊勢・松坂をはじめ、九州から関東にかけて
各地で木綿の栽培が行われるようになる。

江戸時代になると各地で綿織物が生産され価格が下がり、絹の着用が庶民には
禁制されたこともあり、麻に代わる庶民の布として綿布が台頭する。

また藍染めと相性がよく、絣(かすり)、縞(しま)、絞りなど各種の染色が
行われるようになる。

しかし日本国内で栽培されていたアジア綿は繊維が短いため、手で糸繰りする
には十分だったが、機械で大量に紡績するには不向きだった。

機械工業で大量に処理する外国の長繊維種に質や価格で押され、
明治時代以降、日本の綿栽培は急速に衰えた。 

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《綿布の種類》
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◆織り方による分類
〔平織〕
天竺木綿(てんじくもめん)、ガーゼ、金巾(かなきん)、キャラコなど

〔綾織〕
雲斎織、デニムなど

〔繻子織〕
綿サテン

〔添毛織(パイル地)〕
タオル、コール天など

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◆色・染め方による分類
〔未染色〕
白木綿、晒木綿(さらしもめん)

〔先染〕
絣(かすり)・縞(しま)・唐桟(とうざん)・格子(こうし)・など

〔後染〕
絞(しぼり)・型染(かたぞめ)・更紗(さらさ)など

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◆用途による分類
手拭地(てぬぐいじ)・浴衣地(ゆかたじ)など

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◆産地による分類
小倉織り・知多木綿・松坂木綿・三河木綿・真岡(もおか)木綿・結城木綿・
伊予絣(いよがすり)・久留米絣・薩摩絣・有松絞り・鳴海絞りなど

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[2007/12/12]
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