メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈054〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第54号 2004/10/28発行   ●
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【小袖】(こそで)
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◆小袖(こそで)

袖口が狭く、前身ごろの正面中央が開いていて、背から前身の左右の首筋に
とりつけた襟(えり)を正面で引き違えて着る着物。腰を帯で締めて着、
裾長で上下ひとつながりになっている。現在の長着の原形。

もともと古代日本の貴族が重要な儀式に着た「礼服(らいふく)」の下着を
「小袖」と呼んだ記録が残っています。これは表に着る「大袖(おおそで)」
の下に重ねて着る、袖が小さい、盤領(まるえり)の下着です。大袖に比べて
袖の幅が狭い(小さい)ので「小袖」と呼ばれたようです。

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《襟の形の用語》

◆方領(ほうりょう)
前身(まえみ)の正面中央が開いていて、背から前身の左右にとりつけたえり
の様式。いわゆる「着物の襟」。角襟(かくえり)。

◆盤領(まるえり)
衣服の引合せのえりを、下前(したまえ)の上部から背に回して、上前の上部
の端まで円形に仕立てた様式。洋服で言うと「スタンドカラー」。円領。盤領
(ばんりょう)。

◇垂領(たりくび)
衣服の正面の領(えり)の左側と右側とを垂らし引き違えて合せる着用法。
基本的に「方領」の着方だが、鎌倉時代から「盤領」の水干(すいかん)を
たりくびに着ることも行われた。

◇盤領(あげくび)
盤領(まるえり)の首紙(くびかみ/襟の止め具)の紐をかけ合せて留めた襟
の形式。紐をゆるめてくつろがせた垂領(たりくび)に対する名称。まるえり
本来の形式の故に、盤領を「あげくび」ともよむ。

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一方、今の長着につながる「小袖」の襟は、古代の小袖の「盤領」と違い
「方領」ですから別物と考えられます。

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もとは平安時代の貴族の装束の内衣(下着)として筒袖で袖口の小さい垂領
(たりくび)の着物が発生します。
同じ垂領の着物を、庶民は日常着としてを着用しました。庶民の男は裾の短い
垂領の着物に袴を着用しました。これは貴族の服装が簡略化されたとも、別系
統で発生したとも考えられます。

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鎌倉時代に武士が台頭すると、庶民の着ていた垂領の服が上着として公式の場
に着用されるようになります。
鎌倉時代以後の武士の公服である「直垂(ひたたれ)の上衣も垂領です。
またこの時代にに袖に袂(たもと)を加わります。

鎌倉時代になると染小袖(そめこそで)・色小袖(いろこそで)と呼ばれる、
色を染めた小袖が現れます。のちには「箔の小袖(はくのこそで)」という
金銀の箔で模様をつけた華やかな小袖も登場します。

旧来の染めていない白無地の小袖は「白小袖(しろこそで)」と呼ばれます。
庶民や武士が色小袖を着ても、公家はなお白小袖を着用しました。

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室町後期から武家女子は袴をはかない小袖の着流し姿となります。
染めの技術が洗練されて、豪華な装飾用の小袖が生まれます。

正装には身丈の長い小袖を「打掛(うちかけ)」と称して、帯を締めた小袖の
上に帯を締めず打ち掛けて着ました。打掛は「掻取(かいどり)」とも言い、
現代の花嫁衣裳に残っています。

また「腰巻(こしまき)」といって、小袖の上に打掛を着て帯を締め、肩を
脱いで、腰のあたりに巻きつけたものが上流夫人の夏の礼装として用いられ
ました。

一般に「小袖」といえばこの時代の、襟を正面で引き違えて帯を締めて着る
丸袖・対丈の華やかな女物が連想されます。

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江戸時代になると、木綿製ではない(絹など)綿入りの服を「小袖」、木綿製
ではない袷(あわせ)の服を「袷小袖」と呼ぶようになります。単(ひとえ)
は小袖とは言いません。
ちなみに、木綿の綿入れは「布子(ぬのこ)」と呼びました。

▽小袖……絹の綿入れ
▽布子……木綿の綿入れ
▽単……絹・木綿の裏の無い着物
▽帷子(かたびら)……麻の単
▽袷……裏地つきの着物
(バックナンバー2003/11/06参照)

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小袖の帯は、江戸時代以前は紐や細帯でしたが、次第に帯の幅が広くなります。
(バックナンバー2004/01/15参照)

また江戸時代になると、男性も日常着には袴を着けないで小袖を着流しする
ようになります。ただし正装では必ず袴を着用します。

江戸初期は、女性の小袖も「対丈(ついたけ)」でしたが、次第に丈が長く
なりおはしょりを作るようになります。(バックナンバー2003/10/09参照)

小袖の袂が発達し、丸袖から角袖へ、薙袖(なぎそで)から振袖と袖の種類が
増えます。(バックナンバー2004/06/17参照)

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《「小袖」を使ったことば》
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◇元禄小袖(げんろくこそで)
袖の下に丸みがあり刺繍と絞りで文様を表した小袖。元禄時代に流行した。
また、摺箔(すりはく)を用い、元禄風を模した着物。明治末期に流行した。

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◇肌小袖(はだこそで)
小袖を重ねて着る時、最下に着る小袖。外に着るのは「打掛(うちかけ)の小袖」
中間に着るのは「間着(あいぎ)の小袖」という。また、打掛をつけない二枚
重ねの小袖は「上着(うわぎ)」と「下着」という。

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◇花見小袖(はかみこそで)
花見の席で婦女の着る華やかな小袖。
また酒宴の時、枝に掛けわたして幕とした。

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◇夏の小袖
(小袖は絹の綿入れで、冬着であるところから) 
時期に遅れて不用なもののたとえ。夏小袖。

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◇夏も小袖
欲の深いことの例え。
いただく物なら、時節ちがいのものでも喜んで受けること。
ただで貰う物なら、季節はずれでも金目のものがよいという考え方。
「頂く物は夏も小袖」「貰う物は夏も小袖」

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 やっと小袖の話が書けました。
 江戸時代以降の長着(小袖形の着物)の発展は以前から少しずつ書いている
 ので、バックナンバーを参照してください。

●着物関連の本●………………………………………………………………………

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着物を着る前の準備と、脱いだあとの始末を、カラー写真とイラストで説明
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着付けについては別の本で説明しています。

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《「和服の基礎知識」参考文献リンクページ》
 http://www.natubunko.net/wafuku-b.html
《メールマガジンで紹介した本》
 http://www.natubunko.net/magazine-b01.html

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[2006/08/28]
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