メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈055〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第55号 2004/11/04発行   ●
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【布】(ぬの)(1)
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◆布(ぬの)

織物の総称。
もとは、(絹に対して)麻や木綿などの植物繊維から作った織物のこと。

江戸時代までの和服の素材は「呉服(ごふく)=絹織物」と
「太物(ふともの)=綿織物・麻織物」の2種類に大別される。
それ以外の素材として、毛織物・和紙・化学繊維がある。

また、布の織り方は「平織(ひらおり)・綾織(あやおり)・
繻子織(しゅすおり)」の3種類とその応用からなる。

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《日本の衣服に使われた素材の変遷》
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【古代】
◇木綿(ゆう)
(絹に対して)麻や楮(こうぞ)、藤(ふじ)などの植物繊維でつくる布のこと。
絹が輸入されるまで、庶民から支配階級まで衣服の素材はこれしかなかった。

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【3世紀ごろ】
◇絹(きぬ)
中国から朝鮮半島経由で、養蚕技術と製糸技術が伝えられ、日本でも絹織物が
作られる。
身分の高い人は絹を着たが、庶民は麻を着ていた。

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【室町時代〜江戸時代】
◇木綿(もめん)
室町時代末期からワタ(綿)栽培が始められ、
江戸時代になって日本各地で綿織物が生産されるようになる。
安価で肌触りがよく丈夫な木綿が、麻に代わり庶民の衣服の素材の主流となる。

◇毛織物(けおりもの)
室町末期頃から江戸時代を通じて南蛮船(後にオランダや中国の貿易船)に
よって輸入される。江戸時代は舶来の高級品。明治以降、一般に普及する。

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【近代】
◇化学繊維(かがくせんい)
19世紀の終わりに欧米で発明。20世紀に発展。
安価なことから普段着の和服にも取り入れられる。
また防水性が優れた素材は雨具に使われる。

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《植物素材》
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◆麻(あさ)
大麻(たいま)・苧麻(からむし)・黄麻・亜麻・マニラ麻などの総称。
(綿のような種子毛繊維以外の)植物性の長繊維。狭義には大麻のこと。

軽くて堅牢で熱をよく伝え、水分の吸収・発散が速いが、弾力や柔軟性に欠け
る(肌触りが悪い)。現代では夏物の衣類に使われることが多い。

日本では、木綿の普及する近世(江戸時代)になるまで一般衣料に用いられた。

▽麻の布の種類
上布(じょうふ)、亜麻(あま)、苧麻(ちょま・からむし)など

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◆木綿(もめん)
ワタ(キワタ)の種にくっついている白色の繊維から製した糸で織った織物。
綿織物は一般に丈夫で吸水性に富み熱にも強い。

江戸時代以降ワタが栽培され、各地で特色のある綿織物が生産される。
安価で肌触りのよい木綿は、近世以降は麻に代わって一般衣料の素材の代表の
地位を占める。

▽木綿の布の種類
白木綿、晒し木綿(さらしもめん)、綿絣(めんがすり)、ガーゼ、
天竺木綿(てんじくもめん)、キャラコなど

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《動物素材》
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◆絹(きぬ)
蛾(が)の一種のカイコ(蚕)の繭からとった繊維。また、それで織った織物。
優美な光沢があり、軽くて丈夫で弾性に富み、自由な染色ができる。

日本には3世紀ころ朝鮮を経てカイコから糸を取る技術が伝来したという
(完成品の絹の布はそれ以前から伝来していた)。
江戸時代までは贅沢品として、身分によって着用を許されないこともあった。

▽絹の布の種類
紬(つむぎ)、羽二重(はぶたえ)、塩瀬(しおぜ)、縮緬(ちりめん)、
綸子(りんず)、唐織(からおり)、緞子(どんす)、繻子(しゅす)、
銘仙(めいせん)、御召(おめし)、絽(ろ)、紗(しゃ)など

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◆毛織物(けおりもの)
動物(羊・ラクダなど)の毛からとった繊維を原料とした織物。
一般には羊毛織物をさし「ウール」とも称する。

日本には室町時代に南蛮貿易でもたらされたが、江戸時代は高級品で庶民には
縁遠かった。明治以降、一般に普及。外套や袴、冬用の長着に用いられる。
また、腰紐に使うモスリンも毛織物の一種である(木綿製の綿モスリンもある)。

▽毛織物の種類
羅紗(らしゃ)、サージ(セル)、ネル(フランネル)、モスリンなど

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《特殊素材》
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◆紙(かみ)
江戸時代は、渋を塗った和紙を柔らかくして作った衣服もある。
「合羽」のような雨具や、「紙子・紙衣(かみこ)」のような防寒具、
また僧衣に用いられた。

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◆化学繊維(かがくせんい)
天然繊維に対して人為的に精製した繊維の総称。
再生繊維・半合成繊維・合成繊維の3種類に分類される。

19世紀末に欧米で開発。20世紀には日本でも製造・着用が普及し、
和服の長じゅばんや「洗える着物」や雨コートなどに使われる。

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《織物の三原組織 +1》
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【織物の三原組織(さんげんそしき)】
織物の基本の3種類。
「平織(ひらおり)・綾織(あやおり)・繻子織(しゅすおり)」。
その他の組織は、この3種類の応用になる。

他に、織らずに繊維を接着して布状にする「不織布(ふしょくふ)」がある。

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◆平織(ひらおり)
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)とを交互に一本ずつ交わらせて織る
もっとも普通の織り方。

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◆綾織(あやおり)
経糸と緯糸が交差する点が斜めにずれていく織り方。斜文織(しゃもんおり)。

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◆繻子織(しゅすおり)
経糸または緯糸を交差させずに数本またいで表面に長く浮かせ、一方向に
糸を渡っているように見せる。光沢に富み表面のすべりがよいが丈夫でない。
和服地では「繻子(しゅす)」、洋服地では「サテン」という。

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◇不織布(ふしょくふ)
織物ではない布の組織。
繊維をウェブ(薄綿)状またはマット状に広げて、機械的・化学的・熱的に処理
し、接着剤あるいは繊維自身の融着力により接合して作ったシート状のもの。
フェルト、洋服の接着芯など。

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 次回から、布の織り方と素材について詳しく解説していきます。
 それが終わったら、文様の話ができたらいいなと考えています。

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[2007/10/03]
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