メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈013〉 |
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○ ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜 ○
● 第13号 2003/11/27発行 ●
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【女物の着物の礼装】(おんなもののきもののれいそう)
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◆女物の着物の礼装
現代の女物の礼装を分類します。
袴(はかま)や羽織などの上着、帯はまた別の機会に取り上げます。
ちなみに、男物の正装は羽織が要りますが、女物の羽織は正装になりません。
基本的に長着は、振袖以外は同じくらいの袖丈(45〜60cmぐらい)の同じ形に
仕立てます。
振袖のみ、120〜80cmくらいの長い袖丈になります。
使う布の素材や染め方、色、模様の入れ方で格の違いを出します。
帯の結び方は、振袖以外はほとんど「お太鼓結び」です。
振袖は「ふくら雀」「立て矢(たてや)結び」「蝶文庫」など
派手な結び方をします。
着る人の立場、着ていく場所によって、着物の格を合わせます。
布の素材や染め方・織り方などで、着物の格が変わります。
着物は「染め」が「織り」より格上になります。
フォーマル・セミフォーマルは「染め」の着物のみです。
帯は逆に、「織り」が「染め」より格上になります。
季節によって、素材や柄にも制約があります。
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《正装》
正式な慶事の席(結婚式・パーティーなど)の正客が着る礼装。すべて〔染め〕。
◆留袖(とめそで)
〈黒留袖・色留袖〉
江戸褄模様(えどづまもよう/裾に斜めに入った模様)の入った五つ紋の着物。
比翼仕立て。
黒い地色の留袖は「黒留袖」といい、既婚婦人の第一礼装。
地色が黒以外は「色留袖」といい既婚婦人と未婚女性の礼装。
◆振袖(ふりそで)
未婚女性の礼装。袂(たもと)が長いのが特徴です。
絵羽模様(えばもよう)。比翼仕立てまたは伊達衿。
紋付はある場合とない場合があります。
袖丈(袂)が長いほど格が上がります。
大振袖(おおふりそで)が袖丈120cm前後、
中振袖(ちゅうふりそで)が袖丈90〜105cm、
小振袖(こふりそで)が袖丈80cm前後。
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《略装》
フォーマルよりは格が下がります。準礼装。すべて〔染め〕。
◆訪問着(ほうもんぎ)
留袖、振袖に次ぐ格の着物。結婚式にも着ていけます。
着物を広げたときに、模様が一つの模様に見えます(絵羽模様)。
これは染める前に布を裁って仮縫いしてから、模様が一つながりになるように
絵柄を描く手間がかかっています。
訪問着は明治の終りから大正の初めに、洋服の訪問服 (visiting dress)
につりあう格の着物として作られたそうです。
はじめは上流階級の御婦人の外出用で、
広く一般が略礼装として着るようになったのは昭和三十年代以降です。
◆付け下げ(つけさげ)
仕立て上がった着物の前も後ろも文様が肩山の方を向くように染め付けた着物。
訪問着より、少し格が下がります。
戦時中、手間のかかる絵羽模様の訪問着の代わりに作られるようになりました。
現代ではうまく位置を考えて、身頃とおくみの縫い目に柄がまたがるように
染めた付け下げもあります。それでも絵羽模様の訪問着より格が落ちます。
◆色無地(いろむじ)
模様の入らない無地の着物。
一つ紋(背中)・三つ紋(背中・左右の後ろ袖)を入れた地色が明るいものは
披露宴やお茶会、入学式といった吉事用。
地味な色の紋付は、略喪服として着ることができます。
◆喪服・略喪服(もふく・りゃくもふく)
色無地の中で、五つ紋のついた黒い着物を「喪服」として着ます。
帯や帯締め、草履など小物は黒ですが、半衿・足袋は白。
鼠色・紺色・紫色など地味な色に一つ紋・三つ紋を入れた色無地に黒の帯を
結べば「略喪服(半喪服・色喪服)」として、お通夜や法事の席で着られます。
故人と近しい人は喪服、あまり親しくなければ略喪服を着ます。
◆江戸小紋(えどこもん)
小紋は普通は略礼装になりませんが、細かい柄の江戸小紋に紋をつけると
格が上がり、色無地と同様に略礼装になります。紋は一つ紋か三つ紋です。
●ごあいさつ●…………………………………………………………………………
こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。
「五つ紋」「絵羽模様」などの用語については前回分を参考にしてください。
喪服などは、また別の機会に詳しく解説します。
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既婚婦人の一番正式な着物は黒留袖になります。
しかし、勲章授与のために宮中に上がるときに黒留袖は着ません。
宮中では黒は忌まれるためだそうです。
それを知ってから今年の叙勲のニュースを見ますと、たしかに女性は
色留袖か訪問着でした。こういう知識があると、なんでもないニュースを
興味深く見ることができます。
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