メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈012〉 |
←第11号 ▲目次 第13号→ |
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
● ●
○ ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜 ○
● 第12号 2003/11/20発行 ●
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
———————————————————————————————————
【礼装の基本用語】(れいそうのきほんようご)
———————————————————————————————————
礼装・正装の話をする前に、知っておきたい単語の説明をしておきます。
−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−
《加工方法の違い》
◆染め
すでに織り上がった白い生地に後から色柄を染め付けた布で作る着物。
「後染め(あとぞめ)」ともいいます。
基本的に素材は絹。
◆織り
先に色をつけた糸で織り上げた布で作る着物。
「先染め」ともいいます。
素材は絹、木綿、麻、ウールなどさまざま。正式な席には着ていけません。
◇着物は「染め」が格上、帯は「織り」が格上になります。
−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−
《仕立て方の違い》
◆比翼仕立て(ひよくじたて)
袷長着に、衿下から裾、袖口、振り、衿を二重につけたもの。
上着と下着を二枚重ねたように見せます。主に式服に使われます。
もともと着物を二枚重ねて着ていたのを省略したものです。
◆伊達衿(だてえり)
和服で、重ね着しているように見せるための衿。
比翼仕立てをさらに省略したものです。「比翼衿」とも言います。
白色または着物との調和のよい色の衿を着物の衿の裏に止めて用います。
_.| |_
/\\\ ///\
/ \\^\ /←─────半衿(長襦袢につける)
‾‾‾‾‾‾‾\ \\ ^/ // /‾‾‾‾‾‾
| \ \\ /←─── 伊達衿 |
| \ // / |
| \ // ←──共衿(ともえり/着物の衿)
| // / |
| // / |
| //\ /| |
| // \/ | |
| // / | |
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
※伊達衿(比翼衿)をつけるのは、振袖、留袖
−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−
《柄の入れ方の違い》
◆絵羽模様(えばもよう)
仕立てた時に、縫い目にまたがって連続した一つの絵になるようにした
大柄な模様。
振袖・訪問着・羽織など盛装用。
柄を染める前に白生地を裁って仮縫いし、絵柄の位置を決めるという
手間を掛けています。
着物全体に模様付けしたものはとくに「総絵羽模様(そうえばもよう)」
と呼びます。
◆江戸褄模様(えどづまもよう)
衿下から裾へ、斜めに裾模様を染め出した着物。
絵羽模様の一種ですが、斜めになっているところが特徴。
女性の留袖に使われます。
◆熨斗目模様(のしめもよう)
袖の下部と腰のあたりに真横に区切って格子縞や横縞を置いたもの。
◆付け下げ(つけさげ)
仕立て上がった着物の前も後ろも文様が肩山の方を向いている文様の置き方。
着物の生地は、前後身頃は肩の部分、袖は袖山(腕の上)で折り返して
つながっています。全部同じ方向の柄ですと、前が上向きなら後ろは下向き
模様になります。
付け下げは、布のどこが肩や袖になるか考えて柄をつけています。
◇付け下げの模様の入れ方(略図)
┌─────┬──────┐←裾
│ ↓ 後 │ ↓ │
│ ろ │ │
│ ↓ 身 │ ↓ │
│ 頃 │ │
┌─────│ ↓ │ ↓ │─────┐
│ ↓ │ │ │ ↓ │
│ │ ↓ │ ↓ │ 後 │
│ ↓ │ │ │ ↓ろ │
│ │ ↓ │ ↓ │ 袖 │
│ ↓ │ │ │ ↓ │
│ │ /‾‾‾‾‾\ │ │
│ ↑ │ / \‾‾‾/ \ │ │←肩山(上)
│ │ \ \ / / │ │
│ ↑ │ ↑ \ / / │ ↑ │
│ │ / / │ 前 │
│ ↑ │ ↑ / / ↑ │ ↑袖 │
│ │ /\/ │ │
│ ↑ │ / /│ ↑ │ ↑ │
└─────│ / / │ │─────┘
│ \/ │ ↑ │
│ │ ↑ │ 前 │
│ │ │ 身 ↑ │ ↑…模様の上方向
│ │ ↑ │ 頃 │
│ │ │ ↑ │
│ │ ↑ │ │
│ │ │ ↑ │
│ │ ↑ │ │
│ │ │ ↑ │
└─┴───┴──────┘←裾
◆着尺地(きじゃくじ)
おとな用の着物一枚を作るのに要する布地の反物。
絵羽模様のものは、布地を裁断して仮仕立をして模様を染めるため、
反物になっていないので着尺地とは呼びません。
柄によっては後ろ身頃が逆さ模様になります。
◆小紋(こもん)
布地一面に染め出した細かな染色模様。それを型染めとしたもの。
今は婦人の和服に用います。
◆江戸小紋(えどこもん)
小紋染の一種。江戸時代、裃(かみしも)をはじめ男女の晴着に用いた緻密な
文様の小紋染。近年、小紋という言葉が広義に用いられるようになったため、
江戸時代以来の小紋染を特定した用語。
小紋の中でも江戸小紋のみ、略礼装に使われます。
−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−
《素材の違い》
◆羽二重(はぶたえ)
目が細かく肌触りよく光沢のある上等な絹織物。
高級な和装式服、裏地、下着、帯などにする。
男性の正装の羽織には黒羽二重、花嫁衣裳には白羽二重が使われます。
◆縮緬(ちりめん)
表面に細かいしわが入った絹織物。縦糸に普通の生糸、横糸に よりの強い
生糸を使って平織りにし、ぬるま湯に入れて縮ませたもの。
◆一越縮緬(ひとこしちりめん)
皺(しぼ)の細かいのが特徴。普通の縮緬は緯糸(よこいと)として左右強撚糸を
二本ずつ交互に打ち込むが、これを一越(緯糸一本)ごとに織り込んだもの。
◆御召(おめし)
「御召縮緬」の略。
ねり糸で織り、皺(しぼ)を寄せた先染め・先練りの絹織物。
御召料の意で特に徳川家斉が好んだと言われます。
◆絞り染め(しぼりぞめ)
布地をつまんで糸で絞ったり板で締めたりなどして、部分的に液の浸入を
防いでから染め出す方法。
くくり染め、纐纈(こうけつ)とも言います。
◆紬(つむぎ)
真綿やくず繭から手紡ぎした節(ふし)のある糸を用い手織機によって平織に
した丈夫な絹織物。多くは植物染料を用い、縞(しま)、絣(かすり)の
織模様としますが、白紬に染色することもあります。
大島紬、結城紬、黄八丈など。
もとは機械で紡げないくず繭を利用した廉価品でしたが、
機械化できないことで現代ではかえって人件費がかかる高級品となりました。
もとは廉価品でしたため、高価になった現代でも礼装には用いられません。
●ごあいさつ●…………………………………………………………………………
こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。
× × × × ×
羽二重というと、絹織物より、和菓子の羽二重餅を思い出します。
【羽二重餅】(はぶたえもち)
糯米粉(もちごめこ)と砂糖を合わせて練りあげたもの。福井市の名産。
明治三十年頃に考案されたもので、羽二重のようななめらかな舌ざわりが特徴。
(別冊歴史読本『和菓子が好き!』より)
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
|
|
▲〈和服の基礎知識バックナンバー〉目次に戻る
▲〈メールマガジン〉に戻る