メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈014〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第14号 2003/12/04発行   ●
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【羽織】(はおり)
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◆羽織(はおり)

長着の上に着る、丈が短くて脇に襠(まち)がついて、衿を外に折り返した
短い外衣。
胸元で紐を結んで着ます。

直綴(ジキトツ)、十徳(ジットク)、胴服(ドウフク)などが変化したものと
言われ、室町後期〜桃山以後は多くの種類が作られました。

江戸時代に武士や町人の外出着・日常着になりました。
明治以降、黒の五つ紋付羽織が一般男子の正装となります。

現代では「羽織袴」というと紋付(もんつき)の羽織と袴をつけた正式の服装。
転じて、転じて、(羽織袴以外の)かしこまった服装も指します。

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◆女の羽織

江戸時代後期、女だてらに羽織を着る江戸深川の芸者(辰巳芸者)は
「羽織芸者」と呼ばれました。この頃は男装の一種の扱いでした。
同じ頃、町人の女房が羽織を用い始めますが、延享五年(1748)に、
女性の羽織着用が幕府から禁止されます。
その後、江戸末期から明治になって、一般の女性も羽織を着るようになります。
そして現代でも、女性の羽織は正装になりません。

戦前は男女とも長めの丈が流行りましたが、
戦中戦後の倹約生活で短い丈が主流となります。
最近は又長めの羽織が出回っています。

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◆羽織の種類

◇袷羽織(あわせばおり)
裏地をつけた羽織。一般的な羽織。

◇単羽織(ひとえばおり)
裏をつけない羽織。夏季またはその前後に使用。

◇絽羽織(ろばおり)
絽・紗など薄い透ける生地で作った、夏用の単羽織。

◇茶羽織(ちゃばおり)
身丈が腰までの短い羽織。襠(まち)を入れず、半反で一着できます。
羽織紐でなく、共布の紐がついています。現代では女性が普段に着ます。
元来は茶人用。

◇絵羽羽織(えばはおり)
肩から袖に続けて、または左右の身頃に続けて模様(絵羽模様)をあしらった
婦人用の羽織。訪問着用。絵羽織(えばおり)。

◇打裂羽織(ぶっさきばおり)
武士の乗馬・旅行などに用いた羽織。背縫いの下半分を縫い合わさずに、
裂けたままにしたもの。背裂羽織(せさきばおり)。背割羽織(せわりばおり)。
引裂羽織(ひっさきばおり)。
馬乗り(背縫いの裾の裂け目)から、刀の先が出るようにして着ます。
時代劇ではおなじみですが、現代では一般に着ません。

◇陣羽織(じんばおり)
昔、陣中で鎧(よろい)・具足(ぐそく)の上に着た、そでの無い羽織。
室町時代に渡来したスペイン人・ポルトガル人などの服装を模したという。

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◆男物袷羽織(略図)

              ______ 
             /      \←衿
 ___________/ │──┬──│ \____________
 ‖      │   │ │  │  │ │   │       ‖
 ‖    袖 │   │ │  │胴 │ │   │       ‖←袖
 ‖    付→│   │ │  │裏 │ │   │       ‖ 口
 ‖    け │   │ │  │  │ │   │       ‖
 ‖      │   │ │  │  │ │   │   袖   ‖
 ‖      │   │ │  │  │ │   │       │
 │      │   │ │⊃ │ ⊂│ │   │       │
 │      │   │ │↑ │ ↑│ │   │       │
 │      │   │ │乳 │ 乳│ │   │       │
 ヽ______│   │ │  │  │ │   │______ ノ
       /│   │ │──┼──│ │   │ヽ 
       ││   │ │  │  │ │   ││
       ││   │ │  │  │ │   ││
       ││   │ │  │  │ │   ││
       ││   │ │  │裾 │ │   ││
       ││   │ │  │折 │ │ 前 ││
       ││   │ │  │り │ │ 身 ││
       ││   │ │  │返 │ │ 頃 ││
       ││   │ │  │し │ │   ││
       ││   │ │  │  │ │   ││
       ││   │ │  │  │ │   ││
       ││   │ │──┴──│ │   ││
       ││   │ │    ↑│ │   ││
       ~‾‾‾‾└─┘     ↓└─┘‾‾‾‾~
      ↑     ↑      前下がり
     襠(まち)  衿(外側に折り返し)

※まちは上部が剣先のように逆三角になっている。
※乳(ち)……羽織紐をつけるための小さな輪。衿の胸の辺りについている。
※袖丈いっぱいに袖付けしてある。
 「人形」(袖の袂・女物の「振り」を縫った部分)はなし。
※女物の羽織には、袖の脇に振り、身頃の脇に身八つ口が開いている。
※胴裏(どううら)と袖裏に裏布をつける。
※単衣羽織は、胴裏の部分(前身頃と後ろ身頃の上半分)に
 「肩すべり」という裏布をつけ、裾折り返しが狭い。
 袖口の内側を「袖口布」で補強してある。

◆「羽織」と「長着(着物)」の違い
・羽織には前身頃におくみがありません。
・羽織には脇に襠(まち/ゆとりをつけるために足す布)をつけます。
・衿は裾までつけ、外側に二つ折りにして前を合わせないで着ます。
・胸に乳(ち)という小さな輪をつけ、ここに羽織紐を通して結びます。
・前身頃が少し長い。前後の丈の差を「前下がり」と呼びます。

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◆額裏(がくうら)
着物の裏の一形式。
主に男袷羽織の胴裏・袖裏などに、花鳥・風景・人物などの額模様のある
緞子(どんす)・塩瀬・羽二重(はぶたえ)などの大幅物を用いること。額。
羽織の表が地味でも、見えないところに金と手間をかけるのが粋とされました。

◆羽織紐(はおりひも)
組紐で、先が房になっています。根元に細い紐がついていて、それを
衿の乳(ち)の輪に通してストラップのように結びます。
房が上を向くように先を揃えて、羽織紐本体で輪を作って結びます。

茶羽織の紐は本体の共布で平たい紐状にして、衿に縫い付けてあります。

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。

           ×  ×  ×  ×  ×

 次回とその次で袴の話をして、その次に男物の礼装の話をしたら、
 本年分の発行が終了する予定です。
 なんとか正月前に礼装の話が終えられそうです。

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[2004/12/12]
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