メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈043〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第43号 2004/07/08発行   ●
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【法被】(はっぴ)
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◆法被・半被(はっぴ)

(1) 近世、下級武士や中間(ちゅうげん/武家の奉公人の一種)の着用した、
  膝丈または腰丈の裾(すそ)の短い上着。主家の家紋を入れて、所属を
  表した。
(2) 印半纏(しるしばんてん)。職人や、旅館・店舗の客引きなどが着る
  お揃いの上っ張り。背中に所属団体名を入れる。
(3) 禅宗で、高僧の椅子の背にかける裂(きれ/布)。
  金襴(きんらん)など豪華な布を用いる。
(4) 男役の着る能装束の一種。胸紐がなく、襴(らん)のある広袖の上着。
  唐人・武装の武士・鬼畜などの役に用いる。

現代の「法被」は(2)の「印半纏」の意味で使われることが多いです。

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◇印半纏(しるしばんてん)

襟・背・腰回りなどに屋号・氏名などの印を染め抜いた腰丈の半纏。
主に木綿製。江戸後期から職人の間で用い、また、雇主が使用人や出入りの者
に支給して着用させる。胸紐がないので、手拭いを帯代わりに結んだりする。
法被(はっぴ)。

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▽半纏・袢纏・半天・伴天(はんてん)
(1) 羽織に似た丈の短い和服の上着。多くは腰丈(尻を覆う長さ)。
  胸紐や襠(まち/脇に足した布)がなく、襟も折り返さない。
  綿入り、ねんねこなど。
(2) 「印半纏」の略。

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▽刺子半纏(さしこばんてん)
火消しが着用した、刺子で作った半纏。現代でも消防団員が着用する。
印半纏より厚地で丈夫。袖は筒袖、裾は腰を覆う長さ。背中に所属団体を示す
模様や文字などが入る。「刺子」は木綿の布を重ね合わせて、一面に細かく
刺縫いをして丈夫にしたもの。

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法被と印半纏は別物という意見もあります。

「法被」の(1)と(2)を別物として考えると、
◇法被(武家の使用人が着用)…衿を折り返して着る。胸に紐が付く。
◇印半纏(職人が着用)…衿を折り返さない。紐が付かない。
と、違いがあります。

実際のところ、「法被」(1)は現代ではほぼ考えなくてもいいと思います。

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法被は和服らしさが大きいわりに、現代でも着る機会が多くあります。

店頭販売の応援、アイドルの親衛隊(って今でも着てるか?)、野球の応援、
文化祭・体育祭・学園祭、祭礼で氏子(うじこ)が集まるとき。

・フリーサイズで体格の違う人でも着られる。
・洋服の上からでも着られる。
・着た人の所属が一目で判る。
・羽織に比べて仕立てが簡単。
などなど、利便性が高いおかげで生き残っています。

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◆法被・印半纏(略図)

              ____ 
             /    \←衿
 ___________/ │─┬─│ \____________
 ‖      │   │ │ │ │ │   │        ‖
 ‖    袖 │   │ │ │ │ │   │        ‖←袖
 ‖    付→│   │ │ │ │ │   │        ‖ 口
 ‖    け │   │ │ │ │ │   │        ‖
 ‖      │   │ │ │ │ │   │   袖    ‖
 ‖      │   │ │ │ │ │ 前 │        ‖
 ‖      │   │ │ │ │ │ 身 │        ‖
 ‖      │   │ │ │ │ │ 頃 │        ‖
 ‖______│   │ │ │ │ │   │_______ ‖
         │   │ │ │ │ │   │  
        │   │ │ │ │ │   │ 
        │   │ │ │ │ │   │ 
        │   │ │ │ │ │   │ 
        │   │ │ │ │ │   │ ←腰を手拭いで縛る
        │   │ │ │ │ │   │  こともある
        │◇ ◇│ │ │ │ │◇ ◇│ 
        │ ◇ │ │ │ │ │ ◇ │ ←腰の部分に模様が
        │◇ ◇│ │ │ │ │◇ ◇│  入ることもある
        │   │ │─┼─│ │   │ 
        │   │ │ │ │ │   │ ←裾は尻を覆う位の丈
        └───┴─┘─┴─└─┴───┘ 
                ↑
                背縫い(後ろ身頃)

※衿は羽織と違って、折り返さない。
※衿は身頃と同じ布、または黒の別布。
※袖は広袖(ひろそで/袖口が下まであいている袖)が多い。
※脇に襠(まち/ゆとりのために足す布)は無し。
※胸紐は無し。手拭いを帯代わりに結ぶこともある。
※前身頃と後ろ身頃の丈はほぼ同じ。
※背中、前後身頃の腰、衿の胸の部分に文字や模様が入る。


●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。

                      ×  ×  ×  ×  ×

 羽織については2003/12/04発行の第14号を参照。
 バックナンバーは
 http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000116269

                      ×  ×  ×  ×  ×

 昔の記念品で「半纏の形に折ったハンカチ」というものが出てきました。
 折り方の説明書が同封されていたので、週末あたりにウェブログに掲載します。

 《右月左月(うづきさつき)》詞己の書いているウェブログです。
 http://right-left.tea-nifty.com/

●参考文献●……………………………………………………………………………

『日本史モノ事典』平凡社 ISBN4-582-12420-8
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582124208/dearbooks-22
『図説江戸4 江戸庶民の衣食住』竹内誠〈学習研究社〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4054019315/dearbooks-22
……などなど

●おまけ●………………………………………………………………………………

法被のネット通販の一例。

◆祭り用半纏(法被)
青地、背中に赤字で「祭」、黒衿、腰に白の模様
http://pt.afl.rakuten.co.jp/c/002f3e2b.9f73a3ec/?url=http%3a%2f%2fwww.rakuten.co.jp%2fomaturi%2f560141%2f559985%2f560393%2f%23551274

◆祭り用半纏(法被)
↑の子供用。
青地、背中に赤字で「祭」、黒衿、腰に白の模様
http://pt.afl.rakuten.co.jp/c/002f3e2b.9f73a3ec/?url=http%3a%2f%2fwww.rakuten.co.jp%2fomaturi%2f560141%2f553446%2f560328%2f%23551098

◆祭り用半纏(法被)
赤地、背中に黒字で「祭」、黒衿、腰に白の模様
http://pt.afl.rakuten.co.jp/c/002f3e2b.9f73a3ec/?url=http%3a%2f%2fwww.rakuten.co.jp%2fomaturi%2f560141%2f559985%2f560389%2f%23551271

◆硫化染半纏(め組)
黒地、肩から袖に赤線、背中に丸に「め」
http://pt.afl.rakuten.co.jp/c/002f3ead.c7e81c5f/?url=http%3a%2f%2fwww.rakuten.co.jp%2fyamai%2f227369%2f231177%2f%23247764


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[2006/06/25]
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