メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈023〉

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
●                                 ●
○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第23号 2004/02/12発行   ●
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

———————————————————————————————————
【家庭用防寒着】(かていようぼうかんぎ)
———————————————————————————————————

◆綿入れ(わたいれ)

裏をつけ中に表と裏の間に綿を入れた衣服。

江戸時代は、冬になると袷(あわせ)の着物を綿入れに仕立て直し、
春が来ると綿を抜きました。現代では綿入れ半纏や丹前など冬物は、
春が来ると仕立て直さずそのまま収納します。

綿は端から詰めるのではなく、広く引き伸ばして布に合わせて切り整えて、
布を縫い閉じます。

−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−

◆綿入れ半纏(わたいればんてん)
「半纏(はんてん)」は羽織に似ているが、衿を外に折り返さない上着。
通常は単(ひとえ)仕立て。背中に屋号を入れた「印半纏(しるしばんてん)」
などさまざまな種類があります。(「半天」は、借字)

裏を付けて表と裏の間に綿を入れた防寒着を「綿入れ半纏」と言います。
よく衣料品売り場で売られている黒い掛け衿のついた綿入れ半纏は
「久留米半纏」というそうです。
袖がないものは「ちゃんちゃんこ」「袖なし半纏」と呼ばれます。

◇ねんねこ半纏(ねんねこばんてん)
子供を背負うときに上からはおる、綿入れのはんてん。
「ねんねこ」「背負半纏」「子守半纏」とも言います。
防寒用で、綿入れ仕立が多いですが、袷(あわせ)仕立や
袖がなくて背中だけの亀の子形もあります。
「ねんねこ」は寝ることの幼児語です。

袖あり/なし、衽(おくみ)あり/なし、
紐付き/おんぶして紐を半纏の上からかける、
綿入れ/なし、脇に襠(まち)あり/なしなど色々な形があります。
関西仕立ては紐付き、関東仕立ては紐別。

◇亀の子半纏(かめのこばんてん)
形が亀の甲に似るのでついた名称。
袖と衽(おくみ)がなく、左右に手を通す部分を開けてある綿入れ半纏。
子供の防寒用。
また、ねんねこ半纏を子供の背中から足にかけて覆うように仕立てたものにも
言います。

◆ちゃんちゃんこ
袖なしの半纏。前に共布の紐が付きます。綿入れまたはウールの単衣で防寒用。
「そでなし」とも言います。
主に子供用ですが、老人も着ます。
還暦の祝いに60歳を迎えた人に赤いちゃんちゃんこを着せる慣習があります。

----------------------------------------------------------------------

◆丹前(たんぜん)
着物より少し長い、広袖(ひろそで)で厚い綿入れの衣服。
くつろいだ時に着る防寒用の室内着で、長着や浴衣の上に着ます。
また、寝具にもします。本来は男物。
現代は「どてら」とも言い、ウールの単仕立てもあります。
黒八丈の掛け衿で、袖口と裾が「ふき」になっているのが特徴です。

江戸時代、現在の東京都神田にあった風呂屋が、松平丹後守の上屋敷の前に
あったため「丹前風呂」と俗称されました。その風呂屋に集まる伊達な遊客が
愛用していた派手な服装に「丹前」の名が付けられました。

◇褞袍(どてら)
普通の着物よりやや長く大きく仕立て、綿を入れた広袖の着物。
防寒用・寝具用。

----------------------------------------------------------------------

◆夜着(よぎ)
(1) 夜寝る時にかけるふとんなどの寝具。よるのもの。
(2) 普通の着物のような形で大形のものに厚く綿を入れた夜具(やぐ)・寝具。

◆掻巻(かいまき)
綿を入れた袖(そで)つきの夜着(よぎ)。掛けぶとんをこの上に掛ける。
からだに「かき巻く」意。
広袖で、夜着より小ぶりで綿も少なく、袖付の下に燧布(ひうちぬの)が
ありません。もとは夏用の夜着。

−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−

《用語解説》

▽広袖(ひろそで)
和裁で、袖口の下方(袂)を縫い合わさない袖。袂部分がない細い袖は「筒袖」。

▽黒八丈(くろはちじょう)
黒い無地の厚手の絹布。八丈島原産。東京都五日市(いつかいち)でも産する
ので「五日市」とも言う。

▽掛衿(かけえり)
着物や布団の衿が汚れないように、その部分の上に縫いつける布。
共布または黒い布を使う。

▽ふき
和裁で、袷(あわせ)・綿入れの袖口や裾の裏地を表よりいくらか出して、
表の縁(へり)から少しのぞくように仕立てた部分。ふき返し。

▽燧布(ひぬちぬの)
袖付けの下部、身八つ口の所に、ゆとりをつけるために入れる別布。

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。

                      ×  ×  ×  ×  ×

 冬は綿入れ半纏を愛用しています。
 これがなかったら冬の寒さを乗り切れません。

 丹前や掻巻は着物というより寝具が発展したものです。
 日本で現代のような四角い掛け布団ができたのは江戸時代で、
 それまでは袖のついた綿入れを掛けて寝ていました。

 寝具についてはまた別の機会にまとめたいと思います。

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

〈和服の基礎知識バックナンバー〉目次に戻る
〈メールマガジン〉に戻る




[2006/01/03]
無断転載禁止/リンクはフリーです
Copyright(C) 2001-2006 詞己 All rights reserved.