メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈022〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第22号 2004/02/05発行   ●
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【和装コート・外套】(わそうこーと・がいとう)
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◆和装コートの衿の形

◇へちま衿
後から前まで、きざみ目を入れず、やや丸みをもたせ、細長いへちまの形に
似ます。肩から衿先に向かって細く曲線を描きます。

◇被布衿(ひふえり)
衿ぐりが四角く、前のたて衿(おくみ)には衿が付きません。
左右の身頃についた丸みを帯びた小衿を折り曲げます。

◇道行衿(みちゆきえり)
襟ぐりを四角く取り、小襟を細身に角型をしたもの。被布衿と違い、
たて衿(おくみ)にも衿が付きます。

◇都衿(みやこえり)
道行衿に似るが、襟ぐりの角が曲線になっています。

◇道中着衿(どうちゅうぎえり)
普通の着物のようなV字に衿元を合わせる衿。
衿が裾まで続くものや、褄下が付くものなどがあります。

◇千代田衿(ちよだえり)
道中着衿に似て、衿が緩やかに曲線を描き、衿先に行くにつれ幅が太くなった
もの。

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■婦人用和装コート(ふじんようわそうこーと)

◆羽織(はおり)
バックナンバー第14号参照。

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◆道中着(どうちゅうぎ)
もとは旅行用の衣服。旅行服の意味。
今は一般的に、道中着衿の婦人用和装コートのこと。
腰辺りにつけた紐を結んで、衿の合わせをとめます。
丈は膝より少し下の「半コート」や、裾まである「長コート」があります。

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◆被風・被布・披風(ひふ)
着物の上にはおる衣服の一種。羽織に似るが、衽(おくみ)深く左右に合せ、
盤領(まるえり)のもの。江戸末期より剃髪・総髪の茶人や俳人などが着用。
明治以降に上流の婦人・子どもの外出用に着用されました。
着丈は膝より少し下までの長さ。
バックナンバー第9号「七五三の晴れ着」参照。

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◆道行(みちゆき)
和服用コートの一種。被布に似た形状。衿ぐりを四角く取り、小衿を細く
角型をしたもの。防寒または塵除けのために外出・旅行などに着用。
現代では婦人用外出着として一般的ですが、男性でも易者なども着用します。
着丈は膝より少し下の六分丈、さらに長い八分丈など。
羽織を下に重ね着したとき、羽織の裾が見えない長さ。

「道行」は旅行、外出という意味がありますが、
他に「男女の駈落ち」という意味もあります。
もともとこの服は、鷹匠の用いる男性用の合羽でした。
江戸時代に歌舞伎の「忠臣蔵」でお軽勘平の道行(駈落ち)の場面で、
お軽が勘平の鷹匠合羽を着用したのが話題になり、女性の間でも流行し、
現在は婦人用として一般的になりました。

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◆雨ゴート(あまごーと)
雨水・泥をよけるために着物の上に着るコート。防水加工がしてあります。
丈が着物を覆う長いものと、上着とスカートに分かれている二部式があります。
衿の形は道行、道中着、へちまなどさまざまな種類があります。

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◆ショール
(もとペルシア語) 正方形・長方形・三角形などの婦人用肩掛け。
軽くて暖かいカシミアなどを使用。
振袖用の毛並みの長い毛皮の襟巻きもショールと呼びます。

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■紳士用外套(しんしようがいとう)

◆角袖(かくそで)
(1) 和服類の袂の先が方形の袖。また、方形の袖の外套。
(2) 和服。洋服に対する呼び方。
(3) 角袖巡査の略。明治時代の私服刑事。職務上の便宜のために、
  制服を着ないで和服を着ていた巡査。主として刑事巡査。

現代では男性用の「方形の袖の外套」という意味で使われます。
袖口に向かって袖が細くなっている「捩り袖(ねじりそで)」もあります。
衿は普通の洋服のショールカラー(衿もとまでボタンがついた折り返し衿)。

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◆とんび
「鳶合羽(とんびがっぱ)」「二重回し・二重廻し(にじゅうまわし)」とも
言います。
手首を覆う丈のケープが付いた、男性用の袖無し外套。
燕尾服の上に着るインバネスコートが幕末から明治初年にかけて輸入され、
男性の和装用に改良され流行しました。
衿は普通の洋服のショールカラー(衿もとまでボタンがついた折り返し衿)。
袖に当たる部分が広く長く裂けており、トンビの羽に似ることから
「トンビ」と俗称されます。

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〈道行衿〉
      _______
     /|      |\  ←小衿  
‾‾‾‾││‾‾‾‾‾‾││‾‾‾‾    
     ││______││       
     │/○     \│       
     │‾‾‾‾‾‾‾‾│
     │        │
     │        │←たて衿(おくみ)
 
     ↑内側でスナップどめ

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。

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 先日の雨の日、電車で雨ゴートを来た御婦人方をお見かけしました。
 たまたま今回の和装コートの文章を考えているときで、参考になりました。

 男物のコートは首元まで衿がつまっていますが、
 女物のコートは下に着ている着物の衿元を見せます。

 男物の和装コートは、洋服のコートの流用です。
 女物の和服は洋服のコートをはおると、帯の厚みで背中がきつくなります。

 インバネスコートではありませんが、子供のとき、ケープ付きのオーバー
 コートを着ていました。サイズが合わなくなり、二年ほど着ただけで他家に
 もらわれていきました。今でも懐かしく思い出すほどお気に入りでした。

●参考文献●……………………………………………………………………………

『日本史モノ事典』平凡社 ISBN4-582-12420-8
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582124208/dearbooks-22
……などなど

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[2006/01/03]
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