メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈052〉
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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第52号 2004/09/23発行   ●
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【蓑】(みの)
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◆蓑(みの)

草を編んで作った雨具の一種。
菅(すげ)、茅(かや)、稲藁(いなわら)、棕櫚(しゅろ)などの茎や葉を
編んで形作り、肩にかけたり紐で結んだりする。
裏面は網のように地を編んで、表面は材料の先端を鳥の羽毛のように垂らして
いる。雨などは蓑毛の流れにそって落ちる。

「蓑笠」ということばがあるように、笠と一緒に用いられることが多い。

日本では奈良時代からすでに使われていた。
江戸時代には町人は雨具として布・紙製の合羽(かっぱ)を着用し、
蓑を着るのは農民・漁民だった。

主として労働や旅行の際、雨雪を防ぎ、日よけのために着用する。
他に、田の泥土や海水で汚れるのを防いだり、荷物を背負うとき緩衝材として
利用する。

また、蓑を異界の者の旅姿としてとらえ、祭りの衣装に使われることも多い。
秋田の「なまはげ」は、蓑を着て大きな鬼面をかぶった姿で家々を回る。

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蓑は主に「背蓑・肩蓑・胴蓑・丸蓑・蓑帽子・腰蓑」の6種類に分類できる。
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(1) 背蓑(せみの)
背部を覆うだけの小型の蓑。
日よけ、または荷物を背負うときのクッション(背中当て)の役目をする。
ヒミノ、セゴ、セナカアテミノ、セナカミノ、ケツテなどと呼ばれる。

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(2) 肩蓑(かたみの)
両肩から後背部、腰部を覆うように編まれた蓑。
東北地方では「ケラ」、北陸地方では「バンドリ」、
その他の地方で「カチミノ」「ヒミノ」などと呼ばれる。

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(3) 胴蓑(どうみの)
両肩から後背部および胴部、腰部を覆うように作られた蓑。
肩蓑との違いは、背中や肩だけでなく、前身ごろも覆っているところ。
一般に「ミノ」と呼ばれる。

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(4) 丸蓑(まるみの)
両肩から全身を覆うように編まれた長い蓑。
マルミノ、マルミヌ、ドーチュミノ、ゴケミノなどと呼ばれる。

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(5) 蓑帽子(みのぼうし)
頭部から背部を覆う蓑。
東北地方で冬の防寒・防風・防雪のために着用する。
ミノボーチ、ミノボッチなどと呼ばれる。

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(6) 腰蓑(こしみの)
腰にまとう、短い蓑。腰巻蓑(こしまきみの)。
水田や川や海などで水につかるとき、腰を保護する。
田植えの農民、漁師、鵜匠(うじょう)などが着ける。
漁師の「浦島太郎」の衣装でも知られる。
マエソ、マエブリ、マエスブロ、マエダレ、コシマキなどと呼ばれる。

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◇バンドリ(羽鳥)
(雀の方言ハドリの訛) 
蓑(みの)の一種。肩蓑。北陸中部地方で使われる方言。まんどり。

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◇ケラ
東北地方で「蓑」をさす。なまはげが着用する。

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《蓑を使った言葉》
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◇蓑笠(みのかさ/さりつ/さりゅう)
蓑と笠。また、雨や雪をしのぐために蓑を着て笠をかぶること。

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◇蓑毛(みのげ) 
(1) 蓑に編んだ茅(かや)や菅(すげ)の先が乱れ垂れたもの。
(2) 鷺(さぎ)の頭の、蓑のように先が不揃いに垂れている羽。 

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◇隠れ蓑(かくれみの)
それを着ると他人から着ている人の姿が見えなくなる魔法の道具。
昔話の「宝物交換」「隠れ蓑笠」では天狗の持ち物とされる。

転じて、真相を意図して隠す(ひきょうな)手段。
今でも「家族名義の会社を隠れ蓑に脱税する」などのように、ニュース等でも
常套句として使われる。

●参考文献●……………………………………………………………………………

『日本史モノ事典』平凡社 ISBN4-582-12420-8
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582124208/dearbooks-22
『図説 民俗探訪事典』大島暁雄:編纂〈山川出版社〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4634600900/dearbooks-22
『【縮小版】日本民俗事典』大塚民俗学会:編集〈弘文堂〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4335570503/dearbooks-22
……などなど

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[2006/08/28]
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