メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈038〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第38号 2004/06/03発行   ●
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【風呂敷】(ふろしき)
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◆風呂敷(ふろしき)
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物を包むのに用いる四角い布。

古くは平安時代から、「袋包(ふくろづつみ)」に対する言葉として、
「平包・平裹(ひらづつみ)」と言いました。
(※「裹」…つつみ。「裏」ではない)

「袋包(ふくろづつみ)」は入れ口以外を閉じて中身が出ないように
あらかじめ作ってある入れ物(袋)であり、
「平包・平裹(ひらづつみ)」は中身に合わせておおったり結んだりして、
その場で入れ物を作りあげる布のことです。

時代が下がり、江戸時代に銭湯での入浴の際、荷物や衣服を包んだり、
湯から上がったときに身支度のため足元に敷いたりした方形の布を
「風呂敷(ふろしき)」と呼ぶようになりました。
次第に、大判の平包(ひらづつみ)全般も「風呂敷」と呼ぶようになりました。

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現代では物を包む方形の布のうち、
小さい二枚重ねまたは一枚の絹布を「袱紗(ふくさ)」、
大きい一枚の絹布・綿布を「風呂敷」と呼びます。
(袱紗については次回詳しくやります)

現代の風呂敷の大きさは小さいほうは二幅(約72cm)から、
大きいほうは七幅(約250cm)の蒲団風呂敷(布団風呂敷)まであります。
(1幅=並幅=約36cm)

素材は、高級なものは縮緬(ちりめん/表面に細かく皺をたたせた絹布)、
安価なものは綿、ナイロン、レーヨンなどで作られます。
結びやすいように薄くしなやかで、かつ丈夫な布が使われます。

模様は、絹布の小幅物は四隅の一端に模様をおいた装飾的なもの、
綿布の大判は連続模様を全体に大きく染め抜いた実用的なものが多いです。

基本的な風呂敷包みは、荷物を風呂敷の真ん中に置き、対角線上の二つの角を
荷物の上で交差させ、それと直角にある二つの角を荷物の上で結びます。
他にもさまざまな包み方があり、一升瓶や布団まで包むことができます。

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◆大風呂敷(おおぶろしき)
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大きな荷物が包める、大形の風呂敷。

「大風呂敷を広げる」には、
実際にはできそうにない大げさなことを言ったり、計画したりする。
大言壮語する。ほらをふく。などの意味があります。

辞書には載っていませんが「風呂敷をたたむ」という言い方もします。
自分の発言(広げた風呂敷)を、責任持って始末をつけることを言います。
小説やマンガにおいては、張りめぐらせた伏線を回収する(話の前の方で
ほのめかした事柄を後から説明する)ことをさします。

風呂敷を広げるだけ広げてたたみきれないマンガや小説に何年も付き合うのは
そろそろ気力が続かなくなってきました(泣)。

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◆唐草模様の風呂敷(からくさもようのふろしき)
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「唐草」とは、からみながら伸びる蔓草(つるくさ)を抽象的に描いた模様です。
デザインや色に決まりはありませんが、たいてい濃い緑色の地に白で模様を
染め抜いた木綿製です。

昭和中期のマンガで泥棒の服装というと、黒い服を着て、てぬぐいで
ほっかむりして、地下足袋を履いて、唐草模様の風呂敷に盗品を包んで背負う
というステレオタイプがありました。
実際そんなベタな泥棒がいたら目立つでしょうが。

唐草模様の風呂敷は明治後半から生産されるようになりました。
もともとは泥棒専用の道具ではなく、庶民の日用品でした。
大きな布を作る織機、唐草文様を染め付ける機械、安価な綿布、人工染料と
いう産業の発達によって大量生産され、庶民が大きな荷物を運ぶのに愛用
されました。

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[2006/06/16]
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