メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈034〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第34号 2004/05/06発行   ●
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【草鞋】(わらじ)
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◆草鞋(わらじ)

藁で編んだ、ぞうりに似た履物。
つま先から出た長い緒(紐)を縁の乳(ち)とかかとのかえしに通して足に
結びつけます。わらんじ。わらんず。
「わらぐつ(草鞋)」から「わらうづ」「わらんづ」「わらんぢ」と転じて
できた語です。
稲藁のほか、麻や藤蔓、布なども材料にします。

元は中国から伝わった草鞋(わらぐつ/藁製の短沓)が、蒸し暑い日本の風土
に合わせて側面を簡略化され紐状になり「草鞋(わらじ)」となり、
さらに作りを簡略化し「草履(ぞうり)」となりました。

わらじは、現代では時代衣装か祭りの衣装で着用するぐらいで、
日常で使う機会はほとんどありません。

        ◇  ◇  ◇

わらじの形ができあがったのは平安時代末期ですが、
戦国時代あたりに戦闘時に履かれるようになります。

それまでは鎧(よろい)を着た上級武士は頬貫(つらぬき)という毛皮製の
浅沓(あさぐつ)を履き、中級武士は皮足袋、下級兵卒は裸足もしくは足半
(あしなか)というかかとのない藁草履を履いていました。
(参考資料『間違いだらけの時代劇』名和弓雄〈河出文庫〉)

江戸時代以前の庶民は日常は裸足が普通でした。

江戸時代になると草履(ぞうり)や下駄が普及しました。
わらじは旅行や労働用の使い捨ての履物でした。
すぐに擦り切れるため、旅行者は替えのわらじを持ち歩いて旅をしました。

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わらじを丈夫にするために、切れやすい乳やつま先、かかとに布を入れたり、
材料にもち藁(もち米の稲の藁)を使ったりしました。

普通の藁だけだと一日半しか持たないところ、
布を交ぜて作った草鞋が一週間持ったそうです。
(参考資料『はきもの』潮田鉄雄〈法政大学出版局〉)

また当時は蹄鉄を打つ技術がなく、
牛馬もひづめの保護のため藁で作った草鞋を履かされていたようです。 

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◆草鞋の構造
◎台/紐/返し/乳
下ページの図を参照
http://www.natubunko.net/waraji01.html
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◇台(だい)
足を乗せる楕円形の部分です。

芯になる1本の「ひきそ」(ひも・藁縄)を巻いて、縦に4本になるように
置いて足の指にひっかけ、ひきそに交差するようにつま先の方から
藁を編みこんで作ります。(図5参照)

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◇紐(ひも)
緒(お)・藁緒(わらお)とも言います。
乳やかえしに通して、足を台に固定します。
台のつま先部分から2本の紐を伸ばし、鼻緒の役割を兼ねます。

紐の通し方は色々あります。

「図3」で説明しているのは、左右の1対の乳を通して、後ろの1対の乳に
通したかえしの輪にくぐらせて、足の甲で二重にして結ぶ方法です。
「図4」で説明しているのは、左右の乳2対に通して、かえしの輪を通して
足首に巻く方法です。

これ以外にも多くの結び方があります。

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◇返し(かえし)
かかとを受ける部分。

かかとに付けた2つの環状の紐で、かかとを固定します。
乳に通すものと、通さないものがあります。

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◇乳(ち)
紐を通すために、台の側面に付けた小さな輪。

左右に二対、計四つある「四乳草鞋(よつちわらじ)」が一般的です。
ふつう土踏まずの横の辺りに1対、さらにかかとの間に1対あります。
乳が1対(2個)、3対(六個)、4対(8個)あるものもあります。

乳をつけず、紐とかえしとだけで足を固定する草鞋もあります。

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◆草鞋の種類
◎乳草鞋/無乳草鞋/草履草鞋/権蔵
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◇乳草鞋(ちわらじ)
一般的なわらじ。台の側面に乳があります。

◇無乳草鞋(むちわらじ)
普通の草鞋に見られる「乳」を欠いた物。紐とかえしで足を固定します。

◇草履草鞋(ぞうりわらじ)
草履によく似た作り方の草鞋。

◇権蔵(ごんず)
乳と紐とを布でつくった草鞋(わらじ)。植物で作った草鞋より切れにくい。
武者草履(むしゃぞうり)。武者草鞋(むしゃわらじ)。ごんずわらじ。
権蔵草履(ごんぞうぞうり)。

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。

                      ×  ×  ×  ×  ×

 今回は図をサイトに置きます。
 複雑でアスキーアートでは描ききれないので。

 「草鞋(わらじ)」と「草履(ぞうり)」はぱっと見で区別しにくい。
 というわけで「草鞋」はひらがな書きにしました。

                      ×  ×  ×  ×  ×

 前に当マガジンで書いていた「尺貫法」のまとめページを作りました。
http://www.natubunko.net/kotoba07.html
 ほとんどマガジンで書いた文章そのままです。
 語句にリンクをつけたぐらいで違いはありません。

 ◇最近買った尺貫法に関する本
 『ニッポンのサイズ〜身体ではかる尺貫法』石川英輔〈淡交社〉
 江戸時代の尺貫法と時刻についてのコラム。
 図版が多く、尺貫法にまつわる日本の道具の話も面白いです。
 著者は江戸時代の考証と、江戸時代を舞台にしたSF小説で有名な作家です。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4473019993/dearbooks-22

●参考文献●……………………………………………………………………………

『日本史モノ事典』平凡社 ISBN4-582-12420-8
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582124208/dearbooks-22

『はきもの〈ものと人間の文化史 8〉』潮田鉄雄〈法政大学出版局〉
わらじ、下駄、草履に関する民俗学の研究書。
「ものと人間の文化史」シリーズは図書館の民俗学の棚にあることが多い。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/458820081X/dearbooks-22

『間違いだらけの時代劇』名和弓雄〈河出文庫〉
時代考証研究家が書かれたコラム。
時代劇の大道具・小道具・衣装・所作の間違いを指摘します。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309471846/dearbooks-22

『彩色江戸物売図絵』三谷一馬〈中公文庫〉
江戸の物売の姿を風俗画の研究者が描き起こしたカラー図版集です。
わらじを履いている人の姿も多いので参考に。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122025648/dearbooks-22
……などなど

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◆武具としてのわらじについて
◇中世歩兵研究所
 武具について考察しているサイトです。
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Library/8740/index.html
 こちらの「フットギアについて」「草鞋について」が参考になります。
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Library/8740/equipment/foots/foot.html
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Library/8740/equipment/foots/warazi00.html

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◆わらじの作り方
 わらじ風草履の作り方を載せているサイト・絵本です。
 わらじそのものの作り方は見つかりませんでした。
 乳やかえしを作るのが難しいですし、履き方も難しいですからね。

◇紙の鎧細工・手作り甲冑工房・鎧廼舎「うさぎ塾」
http://www.fsinet.or.jp/~usa/
わら製草履作り(写真入り)
http://www.fsinet.or.jp/~usa/zouri.html

◇和ぎれ雑貨『いろり』
http://www.wa-gire.com/index.htm
布製わらじ風ぞうりの作り方(写真入り)
http://www.wa-gire.com/fashion/madewaraji.htm

◇『糸あそび布あそび』田村寿美恵:文/平野恵理子:絵〈福音館書店〉
 (たくさんのふしぎ傑作集)
 身近にある糸や布を使って織物を自分で作ろうという子供向けの絵本ですが、
 大人が読んでも面白いです。
 この中で「布でぞうりを編んでみよう」というページがあります。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4834019098/dearbooks-22

●おまけ● ……………………………………………………………………………

先月お願いしたアンケートの結果が出ました。
123名の方にご協力いただき、ありがとうございました。

《アンケート結果》
質問:あなたの小学校の入学式に参列したお母さん(女性の保護者)は
   着物を着ていましたか。(保護者は祖母・おば・姉等を含む。
   ご自分の入学式を覚えていなければ、お子さんのことでも可) 
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着物を着ていた(昭和30年代以前入学)  19人  15%   
洋服を着ていた(昭和30年代以前入学)  5人  4%   

着物を着ていた(昭和40年代入学)  21人  17%   
洋服を着ていた(昭和40年代入学)  17人  14%   

着物を着ていた(昭和50年代入学)  16人  13%   
洋服を着ていた(昭和50年代入学)  18人  15%   

着物を着ていた(昭和60年代〜平成入学)  6人  5%   
洋服を着ていた(昭和60年代〜平成入学)  14人  11%   
 
入学式にはお父さん(男性の保護者)が来た  2人  2%   
その他  5人  4%   
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■最終結果を見る
┗< http://clickanketo.com/cgi-bin/a.cgi?q00020155ad0 >

★協力:メールマガジンをおもしろくする『クリックアンケート』
         →→  [ http://clickanketo.com/ ]
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やはり昭和50年代になると着物より洋服が多くなりましたね。
昭和60年代以降でもお着物の方がいらしたのが意外でうれしくなりました。

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[2006/03/11]
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