メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈032〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第32号 2004/04/15発行   ●
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【草履】(ぞうり)
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◆草履(ぞうり)

鼻緒がついていて、歯がなく、底の平らな履物。

奈良時代あたりに中国から伝わった藁沓(わらぐつ)が簡略化され
草鞋(わらじ)になり、さらに簡略化されたものが草履で、
編み方を略した横着な履物という意味で「物草・懶(ものぐさ)」と呼ばれた。

古くは藁(わら)、藺草(いぐさ)、竹の皮などで編み、横掛けの緒をすげた
(前緒なし)。
平安以後、芥下(げげ)、尻切(しきれ)、足半(あしなか)など種々の形式
が発達し、前壺ができ,現在の形となった。

現在は藁草履のほか,男子用は畳表・竹皮が多く、
婦人用は、表が布・皮・ビニルなど多種で、芯がコルク、裏が皮のものが多い。

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◆草履の種類
 ◎藁系/畳表・竹皮系/皮革系/その他

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藁系……稲・麦などの茎を乾かしたもので作った草履。
    現代では祭礼など特殊な場合に使われる。
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◇藁草履
藁を編んで作った草履。わらのげげ。

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◇足半・足中(あしなか)
藁草履の一種。
台の踵(かかと)の部分がなく、足の裏の半ばくらいの短いもの。
指先とかかとが地面について安定し、足裏の肉の柔らかい扁平部分を保護する。
鎌倉時代からあり、足さばきがよいので武士の戦闘用に用いられた。
江戸時代以後は労働用として農漁村で広く使われ、葬送、祭礼に着用する風習も
ある。現代も、川で作業する鵜匠などが用いる。
尻切れ草履(しりきれぞうり)。蜻蛉草履(とんぼぞうり)。
半物草(はんものぐさ)。

▽長草履(ながぞうり)
足半のような台が短い草履に対して、普通の長さの草履。

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◇金剛草履(こんごうぞうり)
藁(わら)や藺(い)で作った丈夫で大きい草履。普通のものより後部の幅が
せまい。「金剛」は堅固で破れないところからいう。

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◇緒太(おぶと)
(1) 草履・下駄などの鼻緒の太いもの。
(2) 鼻緒を藺(い)で太く作った、裏をつけない草履。装束着用の際の略式用。
  うらなし。藺金剛(いこんごう)。

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畳表・竹皮系……畳表(たたみおもて)の材料の藺草(いぐさ)、
        または竹の皮を編んで作った草履。藁より耐久性があり高級。
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◇雪駄・雪踏(せった)
男物の草履の一種。
竹皮で編んだ草履の裏に牛皮を張り表に水気がしみとおらぬようにしたもの。
室町末期からあり、千利休の考案ともいわれる。
耐久性があるため江戸初期以来普及し、のち踵(かかと)の裏に裏鉄(うらがね)
を付けた。裏鉄は尻鉄(しりがね)ともいい、小石などにあたる音が粋だと
もてはやされた。
席駄(せきだ)ともいう。鼻緒と前緒は布製。

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◇麻裏草履(あさうらぞうり)
平たく編んだ麻糸の平打ちの組緒(くみお)を渦巻きにして、裏に縫い付けた
草履。あさうら。職人・商人など庶民向け。

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◇山谷草履(さんやぞうり)
藺殻(いがら)で編んだ草履。山谷(新吉原)の遊郭通いの客がよく使用した。

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◇京草履(きょうぞうり)
淡竹(はちく)の皮でつくった草履。もと京都の産。
鼻緒は緋縮緬・黒ビロードなど、前緒は紅絹(もみ)。
元禄(1688〜1704)の頃、婦人の間で流行。

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◇藤倉草履(ふじくらぞうり)
表を藺(い)で編み、白・茶などの木綿の鼻緒をつけた草履。ふじくら。

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◇襲草履・重ね草履(かさねぞうり)
表を何枚か重ねた草履。江戸時代の婦人の礼装用の履物で、町人は三枚、
遊女や御殿女中は五枚・七枚と重ねて高くした。
素材は藺草・竹皮など。

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皮革系……動物の皮革、布、ビニールなどで作った草履。比較的新しい素材。
     皮革、布は畳表・竹皮より高級。
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◇革草履・皮草履(かわぞうり)
(1) なめし革で表面を張った婦人用の草履。鼻緒も革製。
(2) 竹の皮で作った草履。

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◇千代田草履(ちよだぞうり)
明治末期から大正期にかけて流行した草履。
踵(かかと)の部分をばね仕掛けにして、空気が入っているように見せたもの。
初め女性用、のちには男性も用いた。空気草履。

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その他
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◇ゴム草履
ゴム製の草履。また、ゴム底の草履。ビーチサンダル。
現代の普段着用で、和服ではくことはほとんどない。

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◆現代の女性用草履

現代の婦人用の草履は
江戸時代の「重ね草履」→明治・大正時代の「千代田草履」の流れを汲んだ
「革草履」が一般的である。

下駄を履くのは普段着か浴衣のとき。

男性用の草履の台が角丸なのに対して、女性用は細長い楕円形をしている。

素材は、布や革(エナメル革)など。
正装用では素材は錦織や綴れ織りなど、台と鼻緒が同色、バッグと揃いにする。
不祝儀では光らない布や革製の黒の草履。

台の高さは、礼装用がかかとが高く、普段用はかかとが低い。

サイズは普段の靴よりワンサイズ小さいぐらい。
草履からかかとが1センチぐらいはみ出るぐらいが、足元がきれいに見える。

雨降りのときは、爪皮などでつまさきにカバーをして、
足袋が汚れないようにする。

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※エナメル革(えなめるがわ)
薬品につけてなめして柔らかくした革の表面にワニスや合成樹脂塗料を塗って、
光沢や耐水性をもたせたもの。靴の甲革、ハンドバッグなどに利用。

※爪皮・爪革(つまかわ)
雨・雪降りなどに、下駄の爪先を覆って汚れを防ぐ用具。つまがけ。

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◆現代の男性用草履

畳表(たたみおもて)の雪駄(せった)をはくことが多い。
男物の革草履もあるが、通人向き。日常着なら下駄をはく。

雪駄の鼻緒の色は、普段は黒・茶・紺・鼠など濃い色、
正装のときは白、不祝儀のときは土地によっては黒を用いる。

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。

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 辞書に出てくる「○○草履」を全部書き出そうと思いましたが、
 数が多すぎるのでとりあえず現代使用されるものを中心に抜き出しました。

●参考文献●……………………………………………………………………………

『日本史モノ事典』平凡社 ISBN4-582-12420-8
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582124208/dearbooks-22
『大江戸ものしり図鑑』花咲一男:監修〈主婦と生活社〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/439112386X/dearbooks-22
……などなど

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[2006/03/11]
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