メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈019〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第19号 2004/01/15発行   ●
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【帯の種類】(おびのしゅるい)
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古い時代の帯は男女とも幅が狭く、一重に締めて結び目を前に垂らしました。
江戸時代に着物の発達に従い、実用と装飾を兼ねた現代の帯に進化しました。
とくに女物は帯を締める位置が高くなり、幅が広くなり、後ろに大きく結び目
を作るようになり、装飾性が高まりました。

現代の帯は基本的に、着物を着て腰紐(女性は腰紐+伊達締め)を結んだ上に、
胴に二重に巻いてから一結びし、後ろに結び目を作ります。
前で結んでから、後ろに結び目を回す方法もあります。

現代の帯は、帯地に柄を入れる方法で「染め」と「織り」に分けられ、
織りの方が格上です。
他に、幅や仕立て方、柄を入れる場所で分類できます。

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■幅・仕立て方による違い =============================================

◎女物 ===============================================================
 〈丸帯・袋帯・名古屋帯・半幅帯・単帯〉〈昼夜帯・扱き帯・名護屋帯〉

◆丸帯(まるおび)

幅の広い女帯。礼装用の豪華な帯。一尺八寸(約70cm)の帯地を二つ折りに
して並幅九寸(約34cm)に仕立てて、一方を縫い合わせて芯を入れる。
長さは4m30cmほど。
重く結びにくく高価なため、現在では花嫁衣裳や舞妓の振袖ぐらいにしか
使われない。

◇結び方:だらり結び・二重お太鼓など

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◆袋帯(ふくろおび)

袋織にした二重になった帯。表と裏を別に織り、2枚を縫い合わせる。
表は柄、裏は無地。帯芯は入れない。
幅は約30cm、長さは約4m20cm。
丸帯の代替品としてできた帯だが、現在では振袖・留袖などの礼装から訪問着
など略礼装の帯として主流。趣味の外出着に合わせる「しゃれ袋」もある。

◇結び方:お太鼓結び・角出し(つのだし)・ふくら雀・文庫結びなど

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◆名古屋帯(なごやおび)

長さは3m50cm前後。幅は、丈(たけ)の三分の一くらいを並幅(約30cm)とし、
あとの部分は半幅(約15cm)に仕立ててる。並幅の部分を後ろの結びに使い、
半幅の部分を胴に巻く。

大正時代に名古屋の女学校の先生が考案し、その後全国的に流行する。
軽くて締めやすく、使う布地も減らせて経済的。
現在は礼装以外の着物の帯として主流。
長さが短いため、袋帯ほど変わった結び方はできない。

▽九寸名古屋帯
:帯幅が九寸(約34cm)で帯芯を入れる。(仕立て上がりは八寸)
▽八寸名古屋帯(袋名古屋帯・かがり名古屋帯)
:帯幅が八寸(約30cm)で帯芯を入れない。

◇結び方:お太鼓結びなど

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◆半幅帯(はんはばおび)

普通の帯の半分の幅・四寸(約15cm)の帯。長さは約3m50cm。帯芯を入れる。
帯締めや帯上げは使わない。
普段着や浴衣に使用。

◇結び方:文庫結び・貝の口など

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◆単帯・一重帯(ひとえおび)

裏や芯をつけない帯。
女物の夏季に用いる帯だが、四季を通して使用できるものもあり。
綴織(つづれおり)・博多織など太糸で地厚に織り上げた生地で作られる。
幅は約30cm、長さは約4m20cm。
夏の外出着から浴衣まで結べる。

◇結び方:お太鼓結びなど

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◆昼夜帯(ちゅうやおび)

現在はあまり用いられない。
腹合せ帯(はらあわせおび)、合せ帯、鯨帯(くじらおび)とも言う。
表と裏を別の布地を縫い合せ、芯を入れて仕立てた女帯。
幅は約30cm、長さは約4m20cm。
もと、片側に黒繻子、他の片端に白地をつけた女帯。
白を昼、黒を夜に、または白を鯨の腹、黒を鯨の背になぞらえて名づけられた。
江戸中期から明治まで女帯は、晴れ着は丸帯、普段着は昼夜帯が主流。

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◆扱き帯(しごきおび)

並幅の布を適当な長さに切り、しごいて締める帯。
抱え帯・兵児帯・三尺帯など。単に「しごき」とも言う。

▽抱え帯(かかえおび)
江戸時代、女性が外出する時に裾を引きずらないように、おはしょりをとめる
ために用いた細帯。腰帯。現在では振袖を着るときに帯の下に飾りとして結ぶ
「しごき」として残っている。それ以外ではあまり用いられない。

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◆名護屋帯(なごやおび)

室町末期から江戸初期に流行した組紐の帯。絹糸を丸組みまたは平組みにし、
両端に総(ふさ)をつけたもの。
腰に幾重にも巻いて後ろや脇で諸羂(もろわな/蝶結び)に結んで垂らした。
男女ともに用いた。
豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に持ち帰った技術で作られたことから、
朝鮮出兵の本営が置かれた九州の名護屋の名を冠す。
現在の「名古屋帯」とはまったくの別物。

◎男物 ===============================================================
 〈角帯・兵児帯〉

◆角帯(かくおび)

幅の狭い生地の硬い男帯。
長さ一丈五寸(約4m)、幅六寸(約20cm)の帯地を二つ折にして仕立てる。
博多織・小倉織・紬(つむぎ)・緞子(どんす)・絽(ろ)など固く締まった
生地を使用。
礼装の袴の下に締めたり着流しに締めたり、男物の着物全般に使われる。
兵児帯より格上。

◇結び方:貝の口・片ばさみ・浪人結び・一文字など

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◆兵児帯(へこおび)

男帯の一種。柔らかく、角帯に比べて普段用。
長さは3.5〜4m。大幅(約74cm)や中幅(約50cm)のものを10cmぐらいの幅に
折って締める。
総絞り(全体に絞り模様が入っている)のものと端絞りのものがある。
素材は縮緬(ちりめん)、羽二重、木綿、メリンスなど
子供用の兵児帯を「三尺」とも言う。
最近は女性でも浴衣などに兵児帯を結ぶこともある。

もとは薩摩地方の方言で15才〜25才の若者を指す「兵児(へこ)」が用いたこと
から付けられた名称。
明治以降、東京で書生の間で流行したことから、書生帯とも言われた。

◇結び方:わな結び(蝶結び)・片結びなど

◎子供用 =============================================================
 〈三尺帯・祝い帯・結び帯〉

◆三尺帯(さんじゃくおび)

三尺手拭(てぬぐい)を帯がわりに締めたもの。職人や遊び人用。
三尺は約90cm。もとは腰に一巻きして結んだ。
後に、二重巻きできるように長く伸ばして、子供用などにした。
現在は、子供用の兵児帯のこと。
普段着やゆかたに用いられる。

◇結び方:わな結び(蝶結び)・片結びなど

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◆祝い帯(いわいおび)

女児の晴れ着用の帯に使われる名称。
だいたい中幅帯(約26cm幅に仕立てられた丸帯または袋帯)を使う。

懐妊の祝いに腹の保護のために巻く岩田帯(いわたおび)を指す場合もあり。

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◆結び帯(むすびおび)

「結び帯」で検索すると、七五三用の帯としてよく見かける商品。
「作り帯」とも言う。
手早く着付けられるようにあらかじめ飾り結びしてある帯で、
特定の幅や長さが決まっているわけではないらしい。
子供用はだいたい祝い帯と同一と思われる。

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■柄の入れ方による違い================================================
 〈全通柄・六通柄・六通柄〉

◆全通柄(ぜんつうがら)

全体に柄付けがされている帯。
丸帯や半幅帯は全て全通柄。袋帯にも全通柄のものもあり。 

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◆六通柄(ろくつうがら)

帯を結んだときに見えなくなる部分の柄が省略された帯。
垂れ先から全体の六割に柄が入っていることから命名。主に袋帯。 

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◆六通柄(おたいこがら)

お太鼓結びをしたとき、お太鼓と胴の前になる部分にだけ柄が入っている帯。
主に袋帯。 

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。

                      ×  ×  ×  ×  ×

 和裁の長さの単位で使う鯨尺では、
 1寸は約3.78cm、1尺は約37.88cm、1尺は10寸です。
 尺貫法(しゃっかんほう)についてはまた別の機会に詳しく説明します。
 「お太鼓」とか「垂れ先」については次回以降に説明します。

                      ×  ×  ×  ×  ×

 十才ぐらいのころ、正月の着物に締めるピンクの兵児帯が子供っぽくて嫌で、
 着物を着るのを拒否するようになりました。当時の正月の着物というのが、
 オレンジ色のウールのアンサンブルでした。
 今考えてもピンクとオレンジの取り合わせは派手過ぎて気に入りません。
 どうもこの頃から赤い色を着るのに不満を持つようになりました。
 成人式の振袖も濃い碧色で作ってもらいました。

●参考文献●……………………………………………………………………………

『大江戸ものしり図鑑』花咲一男:監修〈主婦と生活社〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/439112386X/dearbooks-22
♪江戸時代の庶民の暮らしや文化を、浮世絵など当時の風俗画を多く掲載して、
 やさしく解説しています。着物の話もあります。
   
『一人で着るデイリー着物—基本の着付けと帯結び 』別冊NHKおしゃれ工房
〈日本放送出版協会〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4149275440/dearbooks-22

『冠婚葬祭にも役立つ着つけと帯むすび』〈パッチワーク通信社〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4893966669/dearbooks-22

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[2005/01/04]
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