メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈016〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第16号 2003/12/18発行   ●
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【袴の着け方】(はかまのつけかた)
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◆袴の着け方

袴の各部分の名称については、前回のマガジンを参照してください。

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(1) 上の着物を着ます。………………………………………………………………

長着の場合、裾が袴からはみ出さないように短めのものを着るか、
帯を締めてから後ろ裾をつまみあげて帯に引っ掛けます。

剣道や弓道などの武道の稽古着の場合、丈の短い「胴衣・胴着(どうぎ)」を
着ます。
「胴衣」は袴の脇から肌が見えないぐらい(太ももの辺り)の丈、
つまり胴を覆う長さの着物という意味です。
袖は袂(たもと)のない筒袖です。
おくみがなく、前がはだけないように衿に付けた紐を結びます。

(2) 帯を締めます。……………………………………………………………………

腰に帯を締めます。
男の帯の位置は、横が腰骨の上、前がお腹の下あたり。
女性より帯の位置が低くなります。

一般に、角帯を一文字結びにします。

剣道着は帯を締めませんが、その他の武道の胴衣は帯を締めます。

※角帯(かくおび)…長さ一丈五寸(約4.5m)、幅六寸(約22.7cm)の帯地を
          二つ折にして仕立てた幅の狭い男用の帯。
          博多織など堅い生地で作られる。

※一文字結び(いちもんじむすび)…帯の背中に当たる結び目で小さい羽根を
                 作る結び方。この羽根で袴の後ろに
                 ふくらみを付ける。

(3) 袴をはきます。……………………………………………………………………

馬乗り袴は左右に分かれているので片方ずつに足を入れます。
袴の前腰は、帯が少し見えるか見えないかぐらいの位置に当てます。

(4) 前紐を結びます。…………………………………………………………………

後ろの帯の結び目の上で交差させ、両脇から前に回し、腹部の前で左右の紐を
重ねます。
さらに両脇から後ろに回し、帯の結び目の下で、紐の先を蝶結びにする。

〈後姿略図〉
      背中心
       ↓
  │___ │  __│
  ├__ \__/__┤←前紐(前腰から続く)
  │ │‾\\//←──帯結び目
  │ └─/\\─┘ │
  │  // \\  ←─帯
  │‾┌─┬─┬─┐‾│←前紐(左右の紐が重なっている)
  │‾└─┴─┴─┘‾│
  │    │↑   │
  │    │└────蝶結び(前紐の終り)
  │    │    │

(5) 袴の後ろの腰板の位置を決めます。……………………………………………

腰板を帯の上に乗せて、腰板の内側のヘラを帯の内側に挟みます。

(6) 後ろ紐を前に回します。…………………………………………………………

後ろ紐を前に回し重ねて、下側の前紐の下にくぐらせます。

〈後ろ紐を下側の前紐の下にくぐらせた状態〉

          前腰
 ├────────↓────┤
 │\___________/│
 │ \ │ │││ │ / │
 │\ \│ │││ │/ /│
 │‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾│←前紐(左右の紐が重なっている)
 │─────────────│  
 │   \ \/ /←────後ろ紐
 │   │\/ / │   │
 │   │/ /\ │   │
 │   / /\ \│   │

(7) 後ろ紐を結びます。………………………………………………………………

前紐にからめるようにして、身体の前で後ろ紐を結びます。

正装のときは「十文字結び」、
普段着のときは「一文字結び」、
武道の稽古のときは「駒結び」などいろいろな結び方があります。

あまった紐は前紐の内側に挟み込みます。

◇十文字結び(じゅうもんじむすび)
結び目を中心に、四つの輪が十字に並ぶように結ぶ。

 │    ┌┐←────後ろ紐 
 ├───┌┼┼┐───┤
 ├───└┼┼┘───┤←前紐
 │    └┘    │

◇一文字結び(いちもんじむすび)
蝶ネクタイのような結び方。結び目の両側に輪が並ぶ。

      後ろ紐 
       ↓
 ├───┌┬┬┐───┤←前紐
 ├───└┴┴┘───┤

◇駒結び(こまむすび)
細結び(こまむすび)・本結び(ほんむすび)・結び切り(むすびきり)
とも言う。
紐をある方向にからめて、さらに反対方向にからめてしっかり結ぶ。
余った後ろ紐は、左右に振り分け両脇で前紐にはさむ。

     後ろ紐(結び目) 
      ↓
 ├────┬┬────┤←前紐+後ろ紐
 ├────┴┴────┤

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。

                      ×  ×  ×  ×  ×

 武道の稽古着については、又の機会に比較しながら取り上げたいと思います。
 素人から見たら同じに見えますが、いろいろ違いがあるようです。
 剣道は帯を締めないとか、弓道の胴衣は男物は脇に身八つ口が開いていて、
 女物は開いていないとか、なぎなたの胴衣は袖からなぎなたが入らないよう
 にゴムを入れてあるとか。

 女物のよそゆきやアンティーク着物の本はたくさんありますが、
 武道の稽古着の違いをまとめている本が見つからないのです。
 競技人口から考えれば、武道の稽古着を日常的に着ている人は多いはずです
 けど、稽古着に興味を持っている人は少ないんでしょうか。
 自分で調べるしかないんでしょうか。

●参考文献●……………………………………………………………………………

「男のきもの大全」
http://www.kimono-taizen.com/
実際に和服を着て暮らしている方の作ったホームページです。
男物の和服の着方を写真付で紹介しています。
当マガジンの大雑把な説明では納得いかない方は、
こちらでじっくりお勉強なさってください。

このホームページを基に編まれた本も出版されています。
『男、はじめて和服を着る』早坂伊織〈光文社新書〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/433403134X/dearbooks-22

                      ×  ×  ×  ×  ×

上記とは関係ありませんが、今年出版された男物の着物の着付けの本です。
着付け途中の写真が豊富です。以前紹介した『男のキモノ』と同じ著者です。
『男のきもの着こなし入門』別冊家庭画報—きものサロンMOOK
笹島寿美〈世界文化社〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4418031707/dearbooks-22

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[2004/12/12]
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