メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈015〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第15号 2003/12/11発行   ●
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【袴】(はかま)
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◆袴

上衣の裾を入れて、腰から足首までの下半身をおおう、筒状のゆるい和服。
腰に付いた4本の紐を結んで固定します。

正装を「羽織袴」というように、
袴は紋付の羽織とともに男性の正式の服装に欠かせません。

歴史的には色々な袴がありますが、
現代は大雑把に「馬乗袴」と「行灯袴」の二種類あります。

もんぺ・たっつけのように、野良仕事の際に着るズボン形で裾の狭い
「山袴(やまばかま)・野袴(のばかま)」、
共布の脚絆(きゃはん)のついた「伊賀袴(いがばかま)」などもありますが、
今回は割愛します。

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◆袴の種類

◇馬乗袴(うまのりばかま)

乗馬用の袴で、襠(まち/内股に足して、開きを楽にする仕切りの布)を
高く裾びらきにしたもの。
足が左右に分かれたゆるいズボン状。
襠高袴(まちだかばかま)。

現代の正装では馬乗り袴を着用します。
剣道・弓道など武道の稽古着も、たいてい馬乗り袴です。

◇行灯袴(あんどんばかま)

襠(まち)のない袴。袋袴。襠無し袴(まちなしばかま)。
前後の中央に大きくひだを取ります。
右足と左足が一緒になった、ロングスカート状。

馬乗り袴では中に着た長着が襠に引っかかって着崩れるため、
略装・普段着として江戸時代の下級武士や明治時代の書生の間で
着られるようになります。

明治・大正時代の女学生が着ていた女袴(おんなばかま)も行灯袴の一種です。
宮中の女性の袴を参考に、明治時代に女学校の先生によって考案されました。

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◆馬乗袴 略図(前)

           前腰(まえごし)
            ↓
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_____________________________
 ↑       / /   │││││  ヽヽ
 │       / /   │││││   ヽヽ     ↑前紐
 │      / /    │││││   ヽヽ
 │      / /     │││││    ヽヽ←笹襞
       / /     │││││    ヽヽ
  紐        //      │││││     \ヽ
 下    /       │││││      \ ←股立ち
     │         │││││        │
 │   │         │││││        │
 │   │         │││││        │←相引
 │   │         │││││        │
 │   │         │││││        │
 │   │         │││││        │
 │   │         │││││        │
 │   │         │││││        │
 │   │         │││││        │
 │   │         │││││        │
 │   │         │││││        │
 │    │         │┘┴└│        │
 ↓   └───────┘   └───────┘←蹴回し
            ↑↑ ↑↑↑
            ││ │││
           一の襞 ││一の襞
            二の襞│二の襞
              三の襞

◆馬乗袴 略図(後ろ)
             ____
            /    \ ←腰板
__________ /\    /\___________
__________/  \__/  \__________
           /‾↑‾‾ │‾‾‾‾ヽ
           / 付菱  │     ヽ     ↑後ろ紐
          /      │     ヽ
          /       │    投 ヽ
         /       │     げヽ
       /        │       \
      /         │        \
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
     │          │          │
        └─────────┴─────────┘
               ↑
               後ろ襞(内側に箱襞)

※襞に隠れて、左右の足を通す間に襠(まち)が付いています。

※行灯袴も襞の内側以外は馬乗り袴とあまり違いはありません。

※前紐の長さ>後ろ紐の長さ

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◆袴の各部分の名称

◇前腰(まえごし)
 袴(はかま)の前方の腹に当る部分。前紐が付いています。

◇股立(ももだち)
 袴の左右の、腰の側面にあたるあきの縫止めの所。
▽「股立ち(ももだち)を取る」
動作を便利にするために、袴の股立ちをつまみあげて、
帯または袴(はかま)の紐(ひも)にはさむこと。

◇相引(あいびき)
 袴(はかま)の両脇の、前後の布を縫い合わせた所。

◇投げ(なげ)
 股立ちから紐付けまでの斜めになった部分。
 男袴は前の投げは笹襞になっています。

◇笹襞(ささひだ)
 袴(はかま)の相引(あいびき)の上の、斜めにたたんだ笹の葉形の襞。

◇腰板(こしいた)
 男袴の腰の後ろにつけた板。中に芯が入っています。
 内側に付いたヘラを帯に差し込んで固定します。

◇付け菱(つけびし)
 腰板の補強につける三角の布。

◇蹴廻し(けまわし)
 袴(はかま)または衣服などの裾口。すそまわり。

◇後ろひだ(うしろひだ)
 内側で箱襞(ボックスプリーツ)になっています。
 前後の襞の内側で襠がついて繋がって、左右に分かれます。

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。

                      ×  ×  ×  ×  ×

 次回、袴の着け方について説明します。

 女袴については『彩識風信』の「海老茶色」の回で少し解説しています。
 また卒業式シーズンに取り上げるつもりです。
 『彩識風信』バックナンバーはこちらです。
 http://www.natubunko.net/mmbn/fushin-indx.html

●参考文献●……………………………………………………………………………

『新きもの作り方全書』大塚末子〈文化出版局〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4579102029/dearbooks-22

『はじめてでも縫えるこどものきもの』林ことみ〈文化出版局〉
副題:七五三の晴れ着・被布・羽織・はかま・お正月のきもの・ゆかた
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4579108272/dearbooks-22

♪袴の作り方を取り上げている、着物の仕立て方の本です。
 『こどものきもの』は子供用ですが、袴や被布の作り方も載っています。

 袴の構造については、剣道や弓道の教本に載っていることもあります。

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[2004/12/12]
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