メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈011〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第11号 2003/11/13発行   ●
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【紋付】(もんつき)
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◆紋付(もんつき)

紋所(もんどころ/各々の家の定まった紋)をつけた長着や羽織。
和装の礼服。紋服。

紋の数によって、一つ紋・三つ紋・五つ紋などと区別されます。
紋の数が多いほど格が高いとされます。

ほかに紋を入れる技法、図柄の陰陽、男女による大きさの違いなどあります。
「表紋」の「染め抜き」「五つ紋」が最も格が高くなります。

《紋の数による違い》

◇五つ紋
羽織または長着の背筋の上、左右の外袖と、胸の左右とに各々一つずつ、
合計五ヵ所に家紋をつけた紋服。

〈正装〉 男性の黒羽二重の長着、羽織
     女性の振袖、留袖、喪服

◇三つ紋
背筋の上と左右の外袖とに一つずつつけた紋服。

〈略装〉 女性の色留袖、色無地、黒紋付羽織など

◇一つ紋
背に一つだけ紋をつけた紋服。

〈略装〉 男性の羽織など。
     女性の色無地、訪問着、江戸小紋、羽織など

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◆紋の入る位置(羽織後ろ)
          _____
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│     |     │     |     │
│  ◎  |     ◎←背紋  |  ◎  │
│  ↑  |     │     |  ↑  │
│  |  |     │     |  │  │
│  袖  |     │     |  袖  │
│  紋  |     │     |  紋  │
│     |     │     |     │
│     │     │     |     │
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      │     │     │
      │     │     │
      │     │     │
      │     │     │
      │     │     │
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※背紋……衿つけから約5.5cm。背縫いの上。
※袖紋……袖山から約7.5cm。横は袖幅の中央。

◆紋の入る位置(羽織前)
          _____
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│     |  │ │ │ │ │  |     │
│     |  │ │ │ │ │  |     │
│     |  │ │ │ │ │  |     │
│     |  │ │ │ │ │  |     │
│     | ◎│ │ │ │ │◎ |     │
│     | ↑│ │ │ │ │↑ |     │
│     | 胸│ ├ │ ┤ │胸 |     │
│     │ 紋│ │ │ │ │紋 |     │
└─────│  │ │─┼─│ │  ├─────┘
      │  │ │ │ │ │  │
      │  │ │ │ │ │  │
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※胸紋(むねもん)……「抱き紋」とも言います。
           肩山から約15cm。横は前身頃の中央。

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《紋入れの技法の違い》

◇染め抜き紋
生地の白色を残して、紋を白く染め抜く方法。

◇縫い紋
刺繍で紋を縫う方法。
染め抜き紋より格が落ちます。

◇染め紋
白地または薄い色地に濃い色で紋を染めたり書いたりする方法。
縫い紋より格が落ちます。

◇張り付け紋(貼り紋)
着物と同じ素材の布に紋を染め抜いて、紋の部分に貼り付ける略式の紋。
自分の紋が入っていない貸衣装などに臨時で付けます。
テレビの「笑天」の大喜利でメンバーが着ている羽織が貼り付け紋です。

《模様の陰陽の違い》

◇表紋(おもてもん)
図柄を白で表した紋。
日向紋(ひなたもん)、陽紋(ようもん)とも言います。

◇陰紋(かげもん)
図柄の輪郭だけを描いた紋。陰の線(複線)で描いた紋。
表紋より略式です。

◇中陰紋(ちゅうかげもん)
表紋と陰紋を組み合わせた技法でス。
陰紋より輪郭線を太くしたり、花だけ面を白くして葉を線で表したりします。
京都方面では葉陰紋(はかげもん)とも言います。

《大きさの違い》

◇男紋(おとこもん)
男物の着物に入れる紋。
鯨尺で一寸(約3.8cm)。

◇女紋(おんなもん)
女物の着物に入れる紋。
鯨尺で五分五厘(約2cm)。
結婚しても、実家の紋を使う地域もあります。

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ほかに家紋とは別に、装飾として楽しむ「しゃれ紋」もあります。
これは礼服には使いません。

◇比翼紋(ひよくもん)
……自分の紋と情人の紋とを組み合せた紋
◇伊達紋(だてもん)
……家紋に替えて、花鳥風月や文字などを図案化した派手な紋所
◇加賀紋(かがもん)
……染めや刺繍で彩色を施した紋所

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

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                      ×  ×  ×  ×  ×

 「紋付袴」というと普通、男性の正装の黒羽二重の五つ紋付き比翼仕立ての
 長着、縞の袴、五つ紋付黒羽二重の羽織を指します。
 羽織・袴についてはまた後日詳しく説明します。

●参考文献●……………………………………………………………………………

『家紋の話—上絵師が語る紋章の美』泡坂 妻夫〈新潮選書〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410600528X/dearbooks-22

♪紋章上絵師を家業とするミステリ作家による家紋の話。歴史だけでなく、
 実際に描く立場から見た造形としての家紋の話は興味深いです。
 収録されている2000点に及ぶ図版がきれいなのも特筆です。

『日本の家紋』辻合 喜代太郎〈保育社〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4586620064/dearbooks-22

♪日本の家紋を植物や動物などモチーフ別にまとめ、簡単な解説つけています。
 家紋の起こりや構成についてなどの基礎知識も収録しています。
 図版は基本的なものをおさえています。

『正しい家紋帖』古沢 恒敏〈金園社〉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4321117119/dearbooks-22

♪現在用いられている日本の家紋をイロハ順に収録しています。
 他に俳優紋、源氏香、角字、紋型の割り出し方など収録。 

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[2004/11/14]
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