メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈008〉

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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第8号 2003/10/23発行   ●
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【肩揚げ・腰揚げ】(かたあげ・こしあげ)
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◆肩揚げ・肩上げ(かたあげ)

子供の着物の裄(ゆき)の長さを調節するために、
肩の所にひだを取って縫い上げること、また縫い上げた部分。

子供が成人して肩揚げのない着物を着るようになることを
「肩揚げをおろす」と言います。

普通十二歳ぐらいになると肩揚げをおろしますが、
芸妓見習い中の舞妓さんの着物は肩揚げをしています。
これは昔の舞妓さんが本当に幼い少女であったことの名残です。
現在では義務教育を終えていない子供を働かせるわけにはいきませんから、
大きななりをしていても舞妓さんなら肩揚げをしているわけです。

◆腰揚げ・腰上げ(こしあげ)

着丈(きたけ)を短くするために、子供の着物の腰の部分を縫いあげたもの。
おはしょりよりも多く布を取ります。
大人になると、女性は着るときに「おはしょり」を作ります。
男性は「対丈」なのでそのまま着ます。

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◆子供用の着物

子供用の和服の裁ち方は
「一つ身」「三つ身」「四つ身」などあります。
大人用は「本裁ち」と言います。

和服地の並幅(なみはば)は約36センチメートル。
一反は大人一人前の和服が作れる分量で、
並幅で鯨尺二丈六尺または二丈八尺(およそ10〜11メートル)の長さです。

◇一つ身(ひとつみ)
「小裁ち(こだち)」とも言います。
赤ちゃんから二歳ぐらいの小児用の和服。並幅の布を使い、
背縫いをしない裁ち方です。

赤ちゃんのうちは肩揚げ・腰揚げをしないで、衿に付紐(つけひも)をして
帯の代わりに結びます。
手を動かし始めると、肩揚げをします。
歩き始めると、腰揚げをします。

◇三つ身(みつみ)
これも「小裁ち(こだち)」とも言います。
三、四歳の子供用着物。並幅の反物の、半反を使って仕立てます。
三つ身を着ず、一つ身の次に四つ身を着る場合もあります。

◇四つ身(よつみ)
「中裁ち(ちゅうだち)」とも言います。
四、五歳から十二歳ぐらいの子供の和服の裁ち方。
並幅の反物の、身長の四倍の長さの布を、縫い合わせて作ります。

七歳ぐらいまでなら、一反の布から
長着と羽織のお対(おつい/アンサンブル)が作れます。

◇本裁ち(ほんだち)
「大裁ち(おおだち)」とも言います。
大人用の和服の裁ち方です。並幅一反の布を使います。

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◆一つ身の着物(略図)
                     裄(ゆき)
               ←────────────→
        肩揚げ       肩揚げ
         ↓         ↓
 __________/\‾‾‾/\___________
 |      ||: \ \‾/ / :||       | ↑
 |  袖付け→||:  \ / /  :||← 袖付け   | │
 |      ||:    / /    :||       | │袖
  \     ||:    /\/    :||      /  │丈
   \    || ___ /_/│ 身八つ口 ||      /   │
    \___/ ___*/  │     →|| ← 振り/    ↓
       / /---/--/---│----------│‾‾‾‾    
      / /  / /  │      │ 
     / /│  / /   │      │ ←腰揚げ
     \/ │─/─/───┼─────┤ 
     ↑  │ |      │     │
     │  │ | 衽   │     │
     │  │ |     │     │
   つけ紐  │ |     │     │
        │ |     │     │
        │ |     │     │
        ‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾ 

※男児は五歳ぐらいまでは身八つ口をあけますが、それ以上になると
 袖丈を全部袖付けして、左脇身頃に紐通しをあけます。 

※つけ紐は左右の衿につけます。
 紐のつけ根に「紐飾り」を縫います。(図の「*」部分)

※つけ紐の縫い目は男児は下向き、女児は上向き。

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子供物の着物の振りと身八つ口があいているのは、体温を逃がすためだそうです。
江戸時代は男女とも元服すると袖の振りを縫いとめて「留袖」にしました。

現代では大人になっても女物の着物には振りがあいています。
「留袖」も袖丈が短くなっているだけで振りを留めていません。
女物の着物は袂が長く帯の幅が広いため、
身八つ口があいてないと脇が見苦しくなります。

子供物の普段着の袖は、袂の丸みの大きい「元禄袖」、袂がない「筒袖」など。
晴れ着は袂の長い「振袖」になります。

一つ身の着物には「背守り」または「背紋」といって、首の後ろの背の中央に
お守りとして絹糸で紋(家紋ではない)を飾り縫いします。
背縫いのない着物には背中から悪霊が入ってくると言われるため、
悪霊を避けるために「背守り」をつけます。
「背守り(背紋)」の例は『日本史モノ事典』(平凡社)P146に載っています。

●ごあいさつ●…………………………………………………………………………

 こんにちは。マガジンのご登録ありがとうございます。

           ×  ×  ×  ×  ×

 昭和51年(1976年)発行の「主婦と生活」の別冊付録『きものと和裁小もの』
 をひっぱり出しました。
 普通の婦人雑誌の付録に、ウールの着物や羽織の作り方が載っているのに
 驚きました。
 小学校の入学式の写真を見ると、クラスの三分の二ぐらいの母親が
 和服(色無地か訪問着に黒の羽織)を着ている時代ですからね。

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[2004/10/17]
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