メールマガジン「和服の基礎知識」バックナンバー〈006〉
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○  ●○● 和服の基礎知識 ●○● 〜日本文化を愉しむために〜  ○
●                   第6号 2003/10/09発行   ●
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【おはしょり】(御端折り)
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◆おはしょり(御端折り)

女物の長着を腰のあたりでたくし上げ、腰紐で締めて、
ちょうどよい着丈にすること。またたくし上げた部分。

長襦袢は対丈(ついたけ/裾がひきずらない長さ)なので、
おはしょりを作りません。

男物の長着は対丈で仕立てているので、おはしょりを作る必要はありません。

子供物は「腰揚げ(こしあげ)」といって、腰の部分をたくし上げて縫って
あります。成長に合わせて縫い上げた部分を調整し直します。

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◆おはしょりの大雑把な作り方

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  | \ \‾/ / |
  |  \ / /  |
  |    / /    |
  |   / /│   |
  │   / / │   │←身八つ口(身頃の脇のあいている部分)
  │  / / │   │
  │… /…/… │………│←着物を折り返し腰紐を結ぶ。
  │ / /  │   │←─おはしょり(折り返し幅を調節)
  ├-/─/──-┼───┤←おはしょり線
  │└-┤   │   │
  │  │   │   │

(1) 着物を腰でたくし上げ腰紐を結び、上におはしょりを出します。
(2) 身八つ口から手を入れて、おはしょり線が水平になるように
  前後のおはしょりを整えます。
(3) おはしょりの上から、腰に腰紐と伊達締めを締めます。
(4) 伊達締めの上に帯を結びます。

◇おはしょりの出来上がり

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|     |  \ / /  |      |
|     |   / /   |      |
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|     ├────┴────┤      |
|     │         |      |
\____│   帯     |_____ノ
     |_________|
     | / /  │    |←おはしょり  
     ├/─/──┼────┤
     │‾│  │    │
     │ │お │ 前  │
     │ │く │ 身  │
     │ │み │ 頃  │
    褄─→│  │    │
     │ │  │    │
     │ │  │    │
     │ │  │    │
     │ │  │    │
      ‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾      

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◆おはしょりの歴史

江戸時代初期(八代将軍吉宗の時代あたりまで)は、女物の着物も対丈でした。
おはしょりはありませんでした。

女物の着物は次第に裾が長くなり、室内では引きずり、外出するときは左右の
褄(つま/着物の衿先から下の部分のふち)を合わせ、片方の手で揃えた褄を
つまんで歩くようになりました。
褄を持って歩く姿は、現代でも舞妓さんや芸妓さん、花嫁衣裳などで見かけます。

裾の長い着物の褄を手で引き上げて歩くことを「褄を取る」と言います。
「左褄(ひだりづま)を取る」というと、左手で褄を持つという他に、
芸者になることも意味します。

歩くのにいちいち着物を持つのがわずらわしいため、身頃をたくし上げて
たるませ、たるみの根元に「しごき」(扱き帯/しごきおび)という幅広の
柔らかい帯を巻きつけて締めるようになりました。
「しごき」は「抱え帯(かかえおび)」とも言い、前身頃の左側で
結び目をつくり、余りは垂らしました。
しごきは現代でも、女児の祝い着などに飾りとして結び下げます。

腰周辺の身頃をたくし上げて折りたたみ腰紐を締めその上に帯を結ぶ
おはしょりという着方がされるようになったのは、
幕末から明治あたりのことです。

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 http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000116269

●参考文献●……………………………………………………………………………

◇『日本の女性風俗史』切畑健:編〈紫紅社文庫〉 ISBN4-87940-572-8
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4879405728/dearbooks-22

古墳時代から江戸時代に日本の女性が着てきた衣裳を再現し、
実際に着用した姿を記録した文庫サイズの写真集です。
江戸時代中期〜後期の衣装では「しごき」を結んだ姿が見られます。
〈京都書院アーツコレクション〉『日本の女性風俗史』の改訂新装版。

▽紫紅社のHP
http://www.artbooks-shikosha.com/

◇『幕末 写真の時代』小沢健志:編〈ちくま学芸文庫〉 
ISBN4-480-08288-3
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480082883/dearbooks-22

幕末に日本人がモデルとなって撮られた写真を集めて、モデルとなった人間や
時代背景、写真技術などを解説しています。
日本で日本人技師が写したものや、外国で留学生が写真館で撮った写真など
さまざまです。
ほとんど羽織袴の侍ですが、行商人や女性、風景写真もあります。

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[2004/10/17]
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