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『彩識風信』 第15号《紅梅色》
……………………………………………………………2003/02/11発行………
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◆いろことば(13) 《紅梅色…こうばいいろ》‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
◇ 色見本 ◇
マンセル:2.5R 6.5/7.5
RGB値:#DF828A
CMYK:C0 M48 Y25 K0
◇やわらかい赤〈JIS系統色名〉
◇紅梅の花のような色。
古くは桃色の濃いもの、のちには紫がかった紅色。
◆ ◇ ◆
ウメは中国原産のバラ科サクラ属の落葉高木。。
平安時代は一般に「梅の花」は白梅のことでした。
【黄梅】と書く「こうばい(くゎうばい)」は、
熟して黄色くなった梅の実のこと。
梅雨(つゆ・ばいう)のことを「黄梅の雨」とも言います。
◆ ◇ ◆
《三四月の紅梅の衣》(さんしがつのこうばいのきぬ)
ここでいう「紅梅」は単色でなく、襲(かさね)という、表着(うわぎ)・
五衣(いつつぎぬ)・単(ひとえ)などの着物を重ねた色合のことです。
紅梅襲(こうばいがさね)は、表が紅または紅梅色、裏は蘇芳色(すおういろ
…黒味を帯びた紅色)または紫色の色目で、十一月から二月頃まで着るきまり
でした。
◆ ◇ ◆
「三四月の紅梅の衣」は、
枕草子25段「すさまじきもの」の冒頭でに出てきます。
〈すさまじきもの、晝(昼)ほゆる犬、春の網代、三四月の紅梅の衣。〉
ここで言う「すさまじい」は
〈興ざめだ。面白くない。つまらない。時期はずれ。不快〉の意味です。
平安時代は、一月から三月が春、四月から六月が夏ですから、
もう夏が来るのにいつまでも春物を着ているのはみっともないと
清少納言は言いたいようです。
(参考文献:清少納言『枕草子』岩波文庫)
◆ ◇ ◆
《紅梅殿》(こうばいどの)
菅原道真(すがわらのみちざね)の邸宅、もしくはその子孫の邸宅の名称。
京都綾小路の南、西洞院大路の東。現在の京都市下京区。
◆ ◇ ◆
道真は平安時代の政治家・学者です。右大臣まで昇りましたが、政敵の陰謀で
大宰府(現在の福岡県太宰府市)に左遷され、失意のうちに没しました。
のちに天神様として祭られ、学問の神様として今でも信仰されています。
道真は、五歳の時に紅梅を愛でる歌を詠んだほど、梅の花を愛した人でした。
彼が大宰府に流されるときに、紅梅殿に植わっていた梅の木に向けて詠んだ
有名な和歌があります。
東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ 梅の花
主人(あるじ)なしとて 春な忘れそ
(歴史物語『大鏡』左大臣時平の項/
勅撰和歌集『拾遺集』では第5句が「春を忘るな」)
歌に詠まれるほど愛された梅の木は、のちに主人を慕って一夜で
都から大宰府まで飛んだという伝説があり、
「飛梅(とびうめ)」と呼ばれます。
現在、太宰府天満宮にある「飛梅」は八重咲きの白梅です。
邸宅の名は「紅梅殿」でも、道真の愛した梅は白梅だったようです。
(参考:太宰府天満宮HP http://www.dazaifutenmangu.or.jp/)
◆ごあいさつ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
こんにちは。マガジンの登録ありがとうございます。
◆ ◇ ◆
原付の運転免許証の更新をしてきました。
自分の本籍地と現住所が異なっていることを久しぶりに思い出しました。
私の本籍地は「梅」の字の入ったきれいな地名でかなり気に入っています。
私の生まれ月が「梅見月」ですし、本物の紅梅が咲き始めましたので、
「紅梅色」を取り上げました。
◆参考文献 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
『新版 色の手帖』永田泰弘:監修(小学館)
『色々な色』ネイチャー・プロ(光琳社出版)※現在は角川書店より刊行
『日本の傳統色 その色名と色調』長崎盛輝(青幻舎)ほか
◆おまけ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
上で紹介した本は以下から購入できます。
◇『枕草子』岩波文庫
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4003001613/dearbooks-22
◇『大鏡』岩波文庫
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4003010418/dearbooks-22
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