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『彩識風信』 第4号《海老茶色》
……………………………………………………………2002/11/12発行………
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◆いろことば(3) 《海老茶色…えびちゃいろ》‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
◇ 色見本 ◇
マンセル:8R 3/4.5
RGB値:#693C34
CMYK:C0 M50 Y50 K60
◇暗い黄みの赤。〈JIS系統色〉
黒みをおびた赤茶色。〈広辞苑 第四版〉
伊勢海老の殻の色です。ゆでて食卓に上る頃は赤くなりますが、
海で生きているのを捕まえる時はこういう色です。
もともと〈葡萄色〉と書いて「えびいろ」という色がありました。
山葡萄の一種であるエビカズラ(葡萄葛)の実の色にちなむ、暗い紫みの赤色
です。
のちに海老の色と混同されるようになり〈海老色〉とも書かれるようになり
ました。近代になり海老茶という色名ができました。
◆ ◇ ◆
《海老茶色の袴》
卒業式でよく見かける、女学生風の袴は《女袴》(おんなばかま)と言います。
『広辞苑 第四版』によると
●女袴
「女性用の袴で、襠(まち)や腰板はなく、前に五襞(ひだ)、後ろに三襞をとっ
た行灯(あんどん)袴」
●行灯袴
「(形が丸行灯に似るからいう) 襠(まち)のない袴。袋袴。」
(ここでいう襠は、袴の内股の部分に足した布)
と書かれています。
要するに〈女袴〉とは、右足と左足に分かれていないオーバースカート状で、
前と後にひだ(プリーツ)を取って足を動かしやすくした袴です。
普通の着物より裾を短めに着付けて、幅の狭い帯を簡単に締めて、その上に
袴をはいて腰についている紐を結びます。
◆ ◇ ◆
女袴が考案されたのは明治の初めです。
明治になると、女教師や女学生らは、すそを気にしないですむ男物の袴を
はいて外に出ました。
しかし、男物の袴を女性をはくのは奇異だとして文部省が禁止しました。
そこで、明治18年に華族女学校(学習院女子部の前身)が創設されたとき、
当時の学監だった下田歌子が宮中女官の袴を元に《女袴》を考案し、制服に
指定したと言われます。
以後、日本各地の女学校が華族女学校の《海老茶の袴》を真似ました。
明治中期以降、海老茶の袴をはいて新しい時代を颯爽と歩く女学生は、紫式部
をもじって〈海老茶式部〉と呼ばれました。
しかし、大正・昭和と女性の洋装が一般的になると、女学校の制服もセーラー
服やスカートに取って代わられました。
女袴が最先端だった時代は、懐かしい過去になりました。
◆ごあいさつ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
こんにちは。マガジンの登録ありがとうございます。
ウィークリーまぐまぐ[エンタテイメント] 2002/11/05 号の
新着マガジン読者数ベスト10@エンタテイメントにて、
『彩識風信』が第9位にランキングされました。
10月28日の時点で254名の読者さまが登録してくださりました。
創刊当初からおつきあい下さっている方も、
新しく登録してくださった方も、
心から感謝します。
◆ ◇ ◆
先週ここで「椅子が欲しい」と書いたら、どうにも我慢できなくなり、
結局、デスクチェアをネット通販で買ってしまいました。
キャスターはちゃんと動くし、座面の高さが変えられるし、
動かしてもきしんで音を立てないし、座り心地もすごく楽。
あとは思い切って、数年前からガタついている椅子を粗大ゴミに出します。
実は買うより、処分するのを面倒に感じているのです。
◆おまけ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
女袴について、以下のホームページを参考にさせていただきました。
◇女袴普及部
女袴についての歴史や豆知識など、いろいろ熱く語っています。
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Icho/9109/hakama-fukyu.html
◇Center of the Circle
弓道に関する面白い話がたくさん読めるホームページです。
「弓引三昧 Part27」で、一般の女袴と弓道の袴の違いを説明しています。
http://homepage2.nifty.com/910/index.html
◇女袴の考案者・下田歌子について書かれた
井上ひさしの短編小説「海老茶式部の母」が収録されている
『合牢者』(文春文庫)は絶版です。
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